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*





止められる、と思った。




何を考えているのだ、と叱り付けられると思った。






しかし、目の前の彼女は、ただ悲しそうに眉を下げて頷いただけだった。






「…かしこまりました、」





と、酷く苦しそうな声でそう言って。






「詳しく、お聞かせ願えますか」




真っ白な手で鉛筆を握り締めた彼女の目を見て、私はゆっくりと口を開いた。








「…私は、過ちを起こしたのです。」





ぽつり、ぽつりと言葉を零しながら私は″あの日″のことを思い出していた…─────









*







ガタン、と揺れる列車



真っ暗な外の景色



点滅する灯り



手首に縛り付けた縄






目の前で眠る、綺麗な髪の″あの人″




暗闇に散る真っ赤な火花…─────






…″あの日″から随分と経った今でも、鮮明に思い出す。





自分の命を奪われるのが怖くて、何度も他人の命を奪い続けた。



″あの人″でさえも、殺そうとした。



なのに、彼の命を奪おうとした私を、彼は暗闇から救い出してくれた。


笑顔で、私を許してくれた。





そして、彼は命を落とした。




罪を犯した私たちを助け、庇って。








それから私は、そのもはや罪悪感と呼べぬほど重く膨らんだ感情に駆られるようになった。






どうして彼が死んだ?



何故罪を犯し、人を殺めたお前が生きている?



何故のうのうと生きている?






「そう、よね……」





私ばかり、どうして生きているのかしら。




彼を殺した私が、どうして。






ここに居てはいけないと思った。



早く死んで、償わなければと。





思い立てば体はすぐに動いて、

迷わず自分の首を絞め上げる為の縄を買い、死に場所を決めた。




…けれど、遺書を書く手だけはどうしても震えてしまって。




何度叩いても動かない手を投げ出し、仕方なくこの場所へ来たのだった。






この遺書を受け取ったら、誰も知らない山奥でひっそりと死のうと、胸に決めて。

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emi(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!感動させられるようなお話を作るのが目標だったのでとても嬉しいです!これからも精進させていただきます! (2021年1月30日 19時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
柚葉 - 涙が出て止まりませんでした。 (2021年1月30日 9時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - あさこさん» ありがとうございます…!あさこ様を感動させることが出来て本当に嬉しいです!きっと幸せに暮らしていますよ!コメントありがとうございます! (2020年11月8日 23時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - とても美しい物語で一気に読んでしまいました!途中から涙が止まりませんでした、来世で2人が幸せになってくれることを心から祈ります(´;ω;`) (2020年11月8日 22時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - ゆきえもんさん» 読んでいただきありがとうございます!!読み直して気が付きました…記憶が曖昧なまま書いてしまってました……ご指摘本当にありがとうございます!! (2020年11月8日 6時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:emi | 作成日時:2020年4月23日 21時

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