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「立ち話もなんですから、中に入ってください。」
そう言って引き戸を開けて見せれば、その子は素直に従った。
「突然すみません、
俺は竈門炭治郎と申します。」
律儀に頭を下げるその子は炭治郎と言うらしかった。
湯飲みを持ち上げる炭治郎君の手も傷だらけでごつごつとしていて
相当の苦労をしてきたのだろうと、胸が苦しくなった。
一体彼らはどんな仕事をしているのだろうと、こんな時も考えてしまう。
「それで、報告というのは…?」
正直、聞きたくなかった。
彼の表情で、その報告が「よくないこと」であることは一目で分かったから。
それでも、聞かなければならないと、何故か思った。
彼は私の目を見つめ、震える呼吸を整えてから、
決心したように口を開いた。
「鬼殺隊の柱である煉獄杏寿郎、
この度、その生を全うし、殉職しました。」
薄々、予想はついていた。
だから、しっかり彼の死を受け止めようと心構えもしていた。
だけど、いざそれを聞いたら、
苦しくて仕方がない。
「…そう、ですか。」
結局言えたのは、その一言だけ。
その声はひどく掠れていた。
必死に堪えたけれど、一粒涙が零れてしまう。
そんな私の顔を見て、炭治郎君は悲しげに顔を俯かせた。
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emi(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!感動させられるようなお話を作るのが目標だったのでとても嬉しいです!これからも精進させていただきます! (2021年1月30日 19時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
柚葉 - 涙が出て止まりませんでした。 (2021年1月30日 9時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - あさこさん» ありがとうございます…!あさこ様を感動させることが出来て本当に嬉しいです!きっと幸せに暮らしていますよ!コメントありがとうございます! (2020年11月8日 23時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - とても美しい物語で一気に読んでしまいました!途中から涙が止まりませんでした、来世で2人が幸せになってくれることを心から祈ります(´;ω;`) (2020年11月8日 22時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - ゆきえもんさん» 読んでいただきありがとうございます!!読み直して気が付きました…記憶が曖昧なまま書いてしまってました……ご指摘本当にありがとうございます!! (2020年11月8日 6時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:emi | 作成日時:2020年4月23日 21時