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彼が店に来なくなって半年が経とうとしていた。
朝起きて、
朝食をとって、
店を開けて、
時々お茶を飲みながら店番をして、
お客さんとおしゃべりをして、
夕焼けが見える頃暖簾を下げて店を閉める。
彼が来なくなってからも、一日は特に何も変わることなく過ぎていく。
そんな日々に慣れつつあった。
けれど、たまに考えてしまう。
こんなありふれた日常に、彼が居たら。
煉獄さんが居てくれたら、と。
こんなことを考えてしまう私は、きっと我儘な女なのだろう。
今日も暖簾を下げに外に出て、その場で少しだけ待ってしまうの。
向こうの角から、貴方が元気に手を振ってくれないかしら。
またあの大声で叫んでくれないかしら。
結局いつも、貴方は来ないのだけれど。
いつも通り、諦めて店の中へ入ろうと引き戸に手を掛ける。
その時、
「桐島Aさん、ですか…?」
後ろから突然名前を呼ばれた。
振り返るとそこには、
何故か木箱を背負った赤い髪の男の子が立っていた。
その市松模様の羽織の陰に見えた刀で、
彼が煉獄さんと「同じ」であることを悟った。
「代書のご依頼でしょうか…?」
そう言って無理やり笑えば、その子は首を横に振った。
「…Aさんに、ご報告があって来ました。」
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emi(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!感動させられるようなお話を作るのが目標だったのでとても嬉しいです!これからも精進させていただきます! (2021年1月30日 19時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
柚葉 - 涙が出て止まりませんでした。 (2021年1月30日 9時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - あさこさん» ありがとうございます…!あさこ様を感動させることが出来て本当に嬉しいです!きっと幸せに暮らしていますよ!コメントありがとうございます! (2020年11月8日 23時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - とても美しい物語で一気に読んでしまいました!途中から涙が止まりませんでした、来世で2人が幸せになってくれることを心から祈ります(´;ω;`) (2020年11月8日 22時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - ゆきえもんさん» 読んでいただきありがとうございます!!読み直して気が付きました…記憶が曖昧なまま書いてしまってました……ご指摘本当にありがとうございます!! (2020年11月8日 6時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:emi | 作成日時:2020年4月23日 21時