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夜
遺書を受け取りに再び代書屋へ向かう。
昼の若い女性が、遺書を俺に渡してくれる。
『遺書』
和紙で作られた封には綺麗な文字でそう書かれている。
内容を確認するためにそれを開き、中身を読んだ。
読み進めるに連れて、何かが心の奥から溢れ出てきた。
それは、『死にたくない』という想い。
『強くならねば』という想い。
毎日任務をこなすことに必死だった俺の胸に、それは染み込んでいく。
父、千寿郎、お館様、柱、甘露寺…
全ての人に向けられたその手紙は、
「如何でしょうか…?」
とても美しかった。
「…うむ!とても綺麗な文だ…!」
そう言うと、その人はふわりと優しく、
でもどこか淋しそうに微笑んだ。
「それは良かった」
その後、代金を払って店を出た。
もうすっかり辺りは薄暗く、風も冷たい。
俺はチラリと店の中にいる彼女を見遣り、閉めかけていた扉を開けて
「戸締りはしっかりするんだぞ!では!」
そう忠告してから今度こそ店を後にした。
何故か、遺書を入れた懐がポカポカと温かかった。
*
「…もうすぐ死ぬ人が、人の心配をするものかしら?」
煉獄が出ていったあとの店の中で、
彼女は首を傾げてそう呟いたのだとか。
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emi(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!感動させられるようなお話を作るのが目標だったのでとても嬉しいです!これからも精進させていただきます! (2021年1月30日 19時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
柚葉 - 涙が出て止まりませんでした。 (2021年1月30日 9時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - あさこさん» ありがとうございます…!あさこ様を感動させることが出来て本当に嬉しいです!きっと幸せに暮らしていますよ!コメントありがとうございます! (2020年11月8日 23時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - とても美しい物語で一気に読んでしまいました!途中から涙が止まりませんでした、来世で2人が幸せになってくれることを心から祈ります(´;ω;`) (2020年11月8日 22時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - ゆきえもんさん» 読んでいただきありがとうございます!!読み直して気が付きました…記憶が曖昧なまま書いてしまってました……ご指摘本当にありがとうございます!! (2020年11月8日 6時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:emi | 作成日時:2020年4月23日 21時