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ふわりと何かに包まれる感覚がした。
鼻を掠める煉獄さんの匂いに酔って、頭が働かない。
だんだんはっきりしていく頭の中で、煉獄さんに抱き締められているということに気が付いた。
「A、」
「っ、はい…」
初めて私の名前を呼び捨てした後に、彼は続ける。
「必ず戻る、安心して待っていてくれ。」
その掠れた声に思わず上を見上げれば、彼は眉を下げて寂しげに笑っていた。
ス、と彼の熱が離れていく。
そうだ、私は彼を引き留めてしまったんだ。
『行かないで』なんて無責任なことを言って。
なのに、貴方はどうしてそんなに優しい言葉をくれるの。
今度こそ、彼は夜の闇に消えていく。
電灯に照らされるその背中は、いつか夢で見た背中とそっくりで
またあの時のように消えてしまいそうだった。
「分かってる、」
彼の仕事が多くの人の命を背負っていることも
私なんかの言葉では止まってくれないことも。
全て分かっているつもりで、受け入れているつもりだった。
なのに、あんな優しい言葉をかけられたら余計、
苦しいの。
貴方のことを余計に好きになってしまうの。
いつか来るかもしれない別れが、どんどん怖くなっていくの。
この矛盾した感情を、私はどうすればいい…?
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emi(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!感動させられるようなお話を作るのが目標だったのでとても嬉しいです!これからも精進させていただきます! (2021年1月30日 19時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
柚葉 - 涙が出て止まりませんでした。 (2021年1月30日 9時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - あさこさん» ありがとうございます…!あさこ様を感動させることが出来て本当に嬉しいです!きっと幸せに暮らしていますよ!コメントありがとうございます! (2020年11月8日 23時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - とても美しい物語で一気に読んでしまいました!途中から涙が止まりませんでした、来世で2人が幸せになってくれることを心から祈ります(´;ω;`) (2020年11月8日 22時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - ゆきえもんさん» 読んでいただきありがとうございます!!読み直して気が付きました…記憶が曖昧なまま書いてしまってました……ご指摘本当にありがとうございます!! (2020年11月8日 6時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:emi | 作成日時:2020年4月23日 21時