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「今日も楽しかった、ありがとう!」
そう言って煉獄さんは店を出ていった。
また夜に来る約束をして。
ふうっと息を吐く。
名残惜しかった。
この間から、彼が来るたびにお茶を一緒に楽しむ、という決まりが二人の間にできた。
けれどもそうやって穏やかに話ができるのもほんの数分。
彼はとても忙しい仕事に就いているのだから仕方がない。
それに、夜また会えるのだから。
そう思い込もうとしても、やはり別れというものは寂しい。
彼はいつも颯爽と店を出ていくから、その度に胸にポッカリと穴が空くようだった。
「たのもう!」
けれど、彼は夜には必ず来てくれる。
それが唯一の私の救いだった。
ねえ、知ってます?煉獄さん。
昔の人たちは、好きな人のところにこうやって夜な夜な通ってきてくれるんです。
そして、お互いに愛の歌を交わしてお別れする。
まるで私たちみたいですね。
…なんて、そんなこと言えるはずないのに。
私はいつしか、そうであってほしいと願うようになっていった。
「では、行ってくる!」
「お気をつけて」
そうして今日も、幸せな時間はあっという間に過ぎ去っていった。
煉獄さんが帰っていった後の夜空の星は、
やけに輝いて見えた。
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emi(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!感動させられるようなお話を作るのが目標だったのでとても嬉しいです!これからも精進させていただきます! (2021年1月30日 19時) (レス) id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
柚葉 - 涙が出て止まりませんでした。 (2021年1月30日 9時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - あさこさん» ありがとうございます…!あさこ様を感動させることが出来て本当に嬉しいです!きっと幸せに暮らしていますよ!コメントありがとうございます! (2020年11月8日 23時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)
あさこ(プロフ) - とても美しい物語で一気に読んでしまいました!途中から涙が止まりませんでした、来世で2人が幸せになってくれることを心から祈ります(´;ω;`) (2020年11月8日 22時) (レス) id: 81f776d056 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - ゆきえもんさん» 読んでいただきありがとうございます!!読み直して気が付きました…記憶が曖昧なまま書いてしまってました……ご指摘本当にありがとうございます!! (2020年11月8日 6時) (レス) id: 86023f8af9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:emi | 作成日時:2020年4月23日 21時