私が入った吹奏楽部は平均身長が高い

団体戦 ページ35

「吹奏楽ってさ、一人だけ上手くてもだめじゃん。」


影山は少し顔を曇らせてうなづく。


思い当たる節でもあるのかな。


「それで、演奏者の心情とかって楽器の音になって出やすいからさ。影山の音が、吹奏楽を楽しんでるようには聞こえなかった。」


「……。」


影山は下を向いた。


「…なんかあったの。」


いや、私そこまで最低じゃないから。


こいつが…影山君が、助けを求めてることくらい、わかる。


「中学が…国見と金田一と同じで…。」


あー…だから全然話さないんだ。


「指揮者なしの演奏をした時、俺だけ突っ走って…。」


ああ、聞いたことある。


「それで、なんか…ずっと、疎遠。」


私は、影山くんに背を向けた。


「北川第一中学校。一人一人のレベルは高い。ただ、昨年の三年生に、とんでもない横暴者がいた。そいつは部活の協調性をほぼ無視。ついたあだ名は、ボーンの王様。」


振り向くと、顔を強張らせていた。


…別にこんだけ人数が集まっていたら、仲良くしたくない人もいる。


別にい、おてて繋いで仲良くしましょうねー、なんて言わない。


ただ、


「吹奏楽は団体戦だよ。」


そう、吹奏楽は団体戦なのだ。


一人一人の上手さが大事で、全員の協調性が重要なのだ。


それを影山君は、身をもって経験したのだろう。


それが、遅かっただけ。

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