19話 ページ19
【実弥side】
あのババア、俺のことを運び屋かなんかだと勘違いしてねぇか。あの後、殊卷の伝説とやらを延々と聞かされた俺は両手に大量の甘味を持って家を目指していた。
両手から匂う甘い匂いは俺をイライラさせる。確かにあそこの甘味処は美味かった。が、お礼だなんだといってずっと甘味を食わされるのはあれはもう礼の域を越して最早拷 問だ。当分、甘味は見たくもないし食いたくもない。
山を登り、扉を開けるとあの時とは違ってすんなりと開く。それがまた俺をイライラとさせた。
あいつにあったら怒鳴る、そう決めて家に入れば家の中は美味そうな匂いで包まれていて呆気に取られる。
基本、家事は俺が担当だ。あいつ曰くそれも修行だと言っていた。料理だけなら時々することもあったが、自ら進んでやるような奴では無い。
少し不審に思いながら部屋に入れば「おかえり」とあいつが俺に声を掛けてきた。俺は不審な目であいつを見る。相変わらず、両瞼についた縦線の傷跡は不気味だ。瞳なんて見たことは1度もない。最初の頃はその不気味な傷跡が気に食わなかったし、瞳の色だってどんな色かなんて想像したりもしたが、今は気にしなくなった。
そんな殊卷は俺の顔を見て嬉しそうに笑って言ったのだ。
「実弥、明日お前は最終選別に向かいなさい」
それは酷く急で、俺の怒りを掻き立てるには丁度いい言葉だった。
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