30話 ページ30
【伊之助side】
「起きなさい伊之助。いつまでそんな所で寝ているつもり?」
怒りの孕んだ低い声で言われ、俺は目を覚ます。茜色の空とはまた違う真っ赤な空。まるで、血を映したような空だ。
そして俺の目の前には血の川のようなものが流れている。赤いづくしだ。
体はさっきと比べると全然痛くない。軽快に動ける。驚いた。
「…伊之助、私はアンタを軽蔑したよ」
俺を起こした声。それは川の向こう岸にいる御天で。御天を見た瞬間俺は御天の元へと駆け寄ろうとした。
「こっちへ来るな!! その、川を渡りきってしまったら、もうお前は戻れなくなるよ」
川に足を突っ込もうとしたら怒られた。こんなに怒られるのは久々だ。
「私があれだけ渇望した生を何故お前は諦める。私に置いて逝かれ悲しみに明け暮れたお前が何故、それをしようとする」
俺は何も答えられなかった。俯くしか出来ない。
「お前の娘はいい子だよ。お前を生かす為、必死に頑張っている。なのに、お前と来たらどうだ。直ぐに生きることを諦めてよくそれで親が務まったもんだね!」
ガン!!と思いっきり頭を殴られた感触がした。でも、御天は向こう岸にいるからきっと気のせいなのだろう。それでも、それでも、涙が溢れ出て止まらない。
「生きなさい、伊之助。まだ生を諦めるのは早すぎる」
俺は頷いた。それを見た御天は嬉しそうな顔をすると直ぐに気を引き締めて言った。
「なら有言実行だ伊之助! 目を瞑れ、精神を集中させ呼吸をしなさい! 今、流れている背中の出血を止めろ! お前なら簡単にできる筈だ!!」
俺は御天に言われた通り、全集中の呼吸で背中の出血を止めた。
「また会う時は今度こそ幸せに死んだ時だよ」
もう御天も真っ赤な空も川も見えない。気がついたら、泣いている天と青い空しか見えなかった。
489人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
虚露/うつろ - あ、あれ?目から水出てきたんだけど???あ、これ水の呼吸だ、これなんの型だ?あれ?あれ? (2019年12月1日 15時) (レス) id: b3c78b6606 (このIDを非表示/違反報告)
もち - え、、、涙とまんねぇ (2019年11月23日 1時) (レス) id: 0050a4580a (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - 泣きました…最高です!!これからも頑張ってください!! (2019年9月15日 23時) (レス) id: c4b3a26433 (このIDを非表示/違反報告)
宇治抹茶 - 8年後に伊之助が…かまぼこ組が子育てをしてる姿が本当に尊いなぁと感じました!!これからも頑張ってください!応援してます。 (2019年9月9日 23時) (レス) id: 70afe8ee20 (このIDを非表示/違反報告)
昆布姫 - めっちゃおもろいです!続き楽しみにしてます! (2019年9月9日 19時) (レス) id: 82960de114 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ