俺が拾った【鬼滅の刃】【嘴平伊之助】

28話 ページ28

【伊之助side】

ふぅと息を思いっきり吸う。

──全集中の呼吸


「我流 獣(けだもの)の呼吸 肆(よん)ノ牙 切細裂(きりこまざ)き」


俺は目にも見えない素早い6連撃を鬼に浴びせる。鬼はそれなりの数の人間を喰っていた。しかし、一度も元鬼殺隊の剣士と戦ったことがなかったのだろう。動きはガチガチで雑魚鬼と変わらなかった。

案外、あっけなく終わってしまった。

地面に膝をつきながら俺はそう思った。
足が震える。血が足りない。ぼーとする。頭が回らない。

俺は地面に倒れた。

地面に思いっきり傷口を当てた為、激痛が走る。こんなに大怪我したのはいつぶりだろうか。きっと派手野郎が知ったら稽古だなんだとうるさいだろう。

いや、もう死ぬからそんなこともないか。俺は自嘲の笑みを浮かべた。

この場に天が居なくて良かった。こんな間抜けな姿、アイツには見せられない。何より、愛した人を殺す場面なんて出くわしたく無いものだ。

今頃は派手野郎の家についただろうか。いや、流石にそれは速すぎるか。

死期が近づくに連れて天を思う気持ちは膨れてゆくばかりだ。

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