2 ページ4
「ほんまに、俺は何してたんやろ？」
まだ突っ伏して寝ているAを見ながら酒を飲んで、思わずその頭を撫でいた。
好きとか嫌いとかそんなんやなくて、なんとなく寂しかったんやと思う。
ただ、こうして誰かに触れたかったんやと思う。
この手に、あたたかさを求めてしまったから。
『…ん…』
瞼がピクッと動くから、パッと触れていた手を離す。
何事もなかったかのように、グラスに口をつけてチビチビと。
途中、グラスの中の氷がカランと音を立てた時、閉じられていた瞼がゆっくりと開くから、
「起きたか？」
グラスは片手に収めたまま、肩肘ついて話しかける。
視点の定まらない瞳を横目で見てから、もう一度、
「目、覚めたか？」
言いながら、俺のやけどまぁええかと水の入ったグラスを差し出す。
ボーッとしたままグラスを手にとって口をつけるAの様子を、まだ俺のことに気付いてへんまま横から観察するように眺めるのも悪くない。
『…はぁ…』
そこそこ入っとった水を飲み干して、大きくついた溜息の意味はなんなんやろ？
…って、それを俺が聞く権利もなにもないよな。
Aはただの飲み友達やねんから。
それでも、ボーッとする横顔を見ながら、もう一口酒を飲む。
その瞳に涙が溜まるのが横から見えて、唇噛み締めたと思ったら、まだ酒の残っている酒器に手が伸びる。
先に手を伸ばしてその酒器を取ったのは俺。
「飲みすぎや」
代わりにグイッと飲み干すと、横でビクッと体が震えたのは気配でわかる。
顔は正面向いとるのに、目だけがゆっくり俺の方を向いてから、
『…む…村上…さん？』
「せや」
『なんで…いるの…？』
「なんでって飲みにきただけや」
完全に俺の方を見るわけでもなく、正面を向いているわけでもなく。
曖昧なところを向いて、それでも俺への問い掛けは続く。
『…ずっと来てなかったのに』
「…忙しかったんやって」
『丸山さんとか、大倉さんは来てた』
「そら…俺は…あいつらの上司や」
『…水曜日は、ノー残業デーだって言ってた』
「…」
『…』
返されへん無言の間。
グラスの氷がカランと音を立てると同時に
『…来なかった理由は…彼女さんでしょ…？』
俺の顔を真っ直ぐに見たAの声が飛んできて、目と目が合って絡まった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 198人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
華絢(プロフ) - kukuさん» 乙女だから大丈夫よ(〃ω〃) 甘やかされたいのを引きずってるけど、、、まぁ、良いかしら？笑 (2019年9月21日 7時) (
レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
kuku(プロフ) - わたしこの場所にいて大丈夫かしら？って思いながら普通の恋愛を楽しむねwwもはや普通がわかんないけどww楽しみにしてるねー！ (2019年9月21日 7時) (レス) id: 77b505d5f1 (このIDを非表示/違反報告)
華絢(プロフ) - ブルームーンさん» こちらこそお立ち寄りいただき、ありがとうございます(〃ω〃) ね、どうなりますやら。彼はどう動いてくれるかなと、私も楽しみです(〃ω〃) (2019年6月14日 15時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - わぁー、どうなって行くんだろ…めちゃ、楽しみです！いつもありがとうございますm(_ _)m (2019年6月14日 14時) (レス) id: 9f4337f44a (このIDを非表示/違反報告)
華絢(プロフ) - 蒼乃碧さん» そんな気がしてましたかー？？？ねー、本当に、色々と、、、(ΦωΦ) (2019年6月3日 17時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：華絢
| 作成日時：2019年5月14日 15時
