10-社員証-(Side忠義) ページ10
俺の記憶が間違えてなければ、
この人がここに来るのは2回目。
職業柄、こうやって人を覚えるのは得意なこと。
1度目は多分1年くらい前だった。
俺が親から店を継いで改装して。
すぐくらいやったからよく覚えとった。
なんとなくまた来てくれそうな雰囲気やったし、
気になったから忘れへんようにしとったけど、
それでも期間が空けば記憶は薄れる。
日々、ここの経営やったりを考えとると日時はあっという間に過ぎていって、
あの時の彼女のことを忘れそうだった日にふらりと現れたその姿。
テーブル席が空いとるのもわかっとったけど、
案内するのはカウンター。
俺の目の前に座らせて、
店員と客という立場で何もないかのように話しかける言葉は、
大「お決まりですか？」
声が聞きたい、そして、少しだけ俺を見て？
そんな願いも込めた一言。
ゆっくりと顔が上がって、
『カフェラテを…』
少しだけ緊張したような顔。
首を上げて気がついたのは、首から下がった社員証。
大「はい」
と満面の笑みで返事をしつつも、社員証を覗き見る。
…Aさんかぁ。
案外抜けているというんか、
危機感がないというんか、なんというか。
俺は彼女の…Aさんの個人情報の一部をあっさりと知ることになって、
思わずふふっと笑みが漏れた。
コトリと置いたカフェラテを少し冷まして口付ける様子を洗い物をしつつ盗み見る。
多分な、
『…美味し…』
と言ったのは聞こえてへんと思ったのかな。
大「どういたしまして」
といつものように返しただけやのに、
驚いた顔するもんやから、
そんなの微笑む以外にないやんか。
一瞬にして染まった頬。
おそらく年上のAさんなんやけど、
なんていうんか一瞬で心を持っていかれた。
あぁ、一目惚れってこういうんかな。
サイフォンがコポコポと音を立てるように、
俺の心も沸々と泡立って温かいような熱いような気持ちでいっぱいになる。
それなのに。
スマホの着信音に反応して、
画面を見てから１つため息をついたのがわかる。
それに、なんとなく、
如何わしい事をしているというんか、
うまく言われへんのやけど公にできひん事をしとるというんか。
なんだか複雑そうな顔をして、
もう一度ため息を吐き出した時に視線をあげたAさんと目が合った。
大「口に合いませんでした？」
きっとこういう事やない。
それでも、なにかを問いかけずにはいられなかった。
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華絢(プロフ) - ひみささん» まったく違いすぎて、引かれないか不安ですΣ(ﾟдﾟlll)ｶﾞｰﾝ (2018年2月19日 19時) (
レス) id: 1867a62e47 (このIDを非表示/違反報告)
ひみさ(プロフ) - 新作公開、ありがとうございます(*^^*) 今までと違うテイストのようで、続きが楽しみです♪ (2018年2月19日 19時) (レス) id: 76e38abfc7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：華絢
| 作成日時：2018年2月19日 18時
