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23-出張-(Side A) ページ23

左手薬指に光る指輪。

それが私の心を繋ぎとめる。

絶対にしてはいけないと語るように光るから、

こんなにそばに居る信五さんに触れたいと思っても

それをしないように踏みとどまる。

私には忠義くんが居る。

それなのに一緒に営業に行った新規案件。

予想通り信五さんと一緒に行動することが多くなって、

前と同じような空気が流れる。

…そう思っているのは私だけかもしれないのだけれど。

ふと香る信五さんの香りにドキッとして、

胸の奥がキュッとする。

何かを取ろうとした時に、

思わず触れてしまった指先にゾクリとして、

そんな気持ちを満たしてほしくて、

夜に帰って来た忠義くんにぴたりと張り付いてみたのに、

やはり優しすぎる忠義くんでは

私は満足できないようだ。

綺麗な寝顔を眺めてから、シャワーを浴びる時に

音にかき消すように自らの欲を自分で収める。

そんな時に思い出すのは、

信五さんの顔と、耳に残る声。

虚しいと同時に、

そうしないと満たされない体に嫌気がさしてくるし、

このままだと一線を越えてしまいそうで不安が押し寄せる。


熱を持った体のままベッドに滑りこんで

背中を向けている忠義くんにくっついて眠りにつく。

朝、目が覚めた時に、

いつの間にか腕枕をされていて、

ぎゅっと抱き枕のようにされていることに

シアワセを感じてしまうのは、

きっとこれが愛なのかなと思わざるを得なかった。

それでも、

結婚して3ヶ月。

信五さんと案件を共にしたのと同じ期間。


村「これ、今日でひと段落付くな」


そう言われた午前の打ち合わせ。

これが終ってしまったら、

またしばらく行動を共にすることはなくなるだろうと思ったら、

自然と


『村上さん。

今日の午後はどこか予定入っていますか?』


と俯きながら問いかけていた。


村「おん?どういうことや?」


『…出張とか…ないのかと思いまして』


あの頃よく使っていた出張というワード。

まぁ、他の人に聞かれては困るので、

出張の部分だけはとても小さな声で言ってみる。

まだ信五さんにこのワードが伝わるのかはわからない。

それでも私にこう言わせるくらい、

我慢の限界が来ていた。


村「…ええんか?」


そう言ってニヤッと笑った顔を見逃さなかった。



その表情で、

私の身体がゾクリと反応する。

24-どうして欲しい?-(Side A)→←22-泳がす-(Side信五)



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華絢(プロフ) - ひみささん» まったく違いすぎて、引かれないか不安ですΣ(゚д゚lll)ガーン (2018年2月19日 19時) (レス) id: 1867a62e47 (このIDを非表示/違反報告)
ひみさ(プロフ) - 新作公開、ありがとうございます(*^^*) 今までと違うテイストのようで、続きが楽しみです♪ (2018年2月19日 19時) (レス) id: 76e38abfc7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:華絢 | 作成日時:2018年2月19日 18時

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