【ＣｌｏｖｅＲ】橙 (ページ28)

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26杯目。ページ28

仕事帰り。

早めに終わったときは、

あの店がある最寄り駅を通ってみたり、

僕なりのご縁の見つけかたをしてみたんやけど、

そんなことじゃご縁いうのは繋がらず。

平日の夜なんかは、

大倉とか村上くん誘ってあの店に行くんやけど、

あの子…Aさんが居ることも、

そのツレたちが居ることもなかってん。

亮ちゃんはそんな僕を見て、

相変わらずニヤニヤしてはるんやけど、

そうしとるだけで

Aさんの話をするわけでもなく。

挙句、

亮ちゃんやヤスを目当てで来とる女の子たちを

笑顔で僕らに押し付けてくる始末やし。

もう、今、僕の頭の中を占領しとるのは、

のんべぇで、

鰤うまそうに食べて、

しっかりしてそうなのにふわふわしとって、

大倉に「名前は？」聞かれて、

すぐ答えるような、そんな人やないねん。

はぁ。

なんや大倉にも村上くんにも

僕にもこうやって色目を使って、

すぐに上目遣いして、

何かって言うと「酔っぱらっちゃた」と

絶対にそれ常套句で使っとるやろ？

てか、飲んでへんやろ？って感じで、

挙句すぐにべたべたと

男のツボはここと書かれている本で学んだんか？

っていうボディタッチとかしてきて、

僕のこの黒い気持ちを

刺激するようなヤツやないんやって。

「…きしょいんやわ…」

低く呟いた言葉に、

その場にいた全員が固まってもうて。

それ以上に、

そんな言葉を吐き出した自分に驚いた。