56 ーiwサイドー ページ8
注:女性出てきます。
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7人が解散して帰り道。
俺は親に頼まれた買い物に行くため、みんなとは別の方向に歩き出した。
スーパーに向かいながら思い出されるのは花火に照らされた阿部の横顔。
少し微笑んで、表現があっているのかはわからないけど、なんていうか綺麗だった。
ジンクスがただの噂じゃなくて本当になればいいのに。
そんなことを思っている俺は、また女々しいなんて言われてしまうかな……
「……照?」
スーパーで買い物を済ませ、外へ出て駅へ向かう途中。
長らく見ていなかった、でも見覚えのある姿が俺を呼ぶ。
咄嗟のことで、なんて呼んでいいかわからなくて、どうしていいかもわからずただそこに立っていた。
「久しぶり……」
ようやく出た言葉がそれで、あいつはあざとく髪飾りを揺らしながらこちらに歩いてくる。
中学時代の元彼。
そう言えばわかりやすいだろうか。
告られて、付き合った。
勝手に想像されて、それと違ったから振られた。
それだけの話だ。
「今から帰るの?」
それはほぼ一緒に帰ろうを意味していて、特に断る理由も、他に用事もなく駅まで歩いた。
なんでこんなタイミングで…
しかも振った側なのにそんな感じで話せるんだよ。
隣でどこか嬉しそうな彼女を見下ろす。
「なんか、昔よりたくましくなったね」
「ん、そうかな……」
「まぁ中身は女々しいんだろうけど笑」
そう言って意地悪く笑う。
「あの時もそうやって振ったよな、お前は」
「んー、そうだっけ?笑」
「そうだよ」
過去の話なんかしながら、今でも遅い彼女の歩くスピードに合わせて歩いた。
今思えばこれはわざとなんじゃないかと思う。
それでも合わせてしまうのは、俺の男としてのプライド。
やっと駅の前まで来たその時。
「――照っ!」
聞き覚えのある声にハッと顔を上げる。
今日2度目の阿部は、息を切らしながらこちらを見ていた。
少し気まずそうに俺らに向かって歩いてくる。
「ラウール見てない?」
「ラウール?弟?」
「うん」
「見てないけど……いないの?」
「家にもいなくて、帰ってこないから……」
心底心配そうに、泣きそうな顔で地面を見つめる阿部に俺も手を貸したくて。
「ごめん、帰って」
少し強い言い方をしてしまった。
でも今はこれしか言えない。
「あ、うん……また会いたいな」
そう言う彼女に手だけ振って阿部と共に駆け出した。
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桜井サラ(プロフ) - ふかやのねぎさん» ありがとうございます!!こちらこそ読んでいただけて光栄です!更新遅めですが頑張ります...! (2020年9月23日 1時) (レス) id: aa947d258f (このIDを非表示/違反報告)
ふかやのねぎ(プロフ) - いわあべの学園ものなんてなかなか無いので嬉しいです!これからも頑張ってくださいね!! (2020年9月22日 18時) (レス) id: 55d9539a79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜井サラ | 作成日時:2020年9月13日 14時