94 ーiwサイドー ページ46
昼飯を食べ終わって、午後からはお化け屋敷でもなく絶叫でもなく、ゆったりした乗り物を探しては片っ端から乗った。
これ本当に楽しんでくれてるかなって思う瞬間もあったけど、俺は阿部がいてくれるだけで楽しい。
もう乗ってない乗り物は少なくなってきて、辺りも暗くなる。
そろそろ帰ろうかと言いかけたのは、観覧車のそばだった。
夜に向けて綺麗にライトが付いたそれが目に入ったけど、さすがに観覧車は男2人では乗らないか、と俺は口を開く。
「そろそろ帰る?」
「え?観覧車乗んないの?あと乗ってないのこれだけだよ?」
「え?あ、そーだっけ」
乗るつもりだったのか……!
またあざとく首を傾げる阿部。
そんなに身長差はないのに何故か上目遣いになっていて、断る気はさらさらないけど断れもしない。
「じゃあ行く?」
「うん行こ!」
ちょっと緊張しながらも、観覧車に乗るにはまだ少し早い時間だからか列は短くてすぐに乗り込める。
扉がバタンと閉められて完全に2人きりの空間。
「俺観覧車なんて久しぶりに乗った!」
そわそわする俺を横に阿部は全く違う意味でそわそわしていて、まだ地上から高さもないのに周りを見渡す。
「俺も」
「ね!俺高いとこもそんな得意じゃないけど」
「え、そーなの?」
「まぁ大丈夫だと思う」
のんきに景色を見ている阿部。
下とか透けてるけど大丈夫かな。
もしかしたら怖くて俺の方に来て、手握って、肩寄せて、でそのまま……ってそれはないか。
もう半分近くまで来ていて少し体が強ばる。
怖いとかじゃなくて。
阿部だって、観覧車の頂上と言えば何をするかくらい知っているだろう。
でもそれを見越して乗ろうと言ったわけではなさそうだし。
それに、付き合ってもないし。
ただの友達。
頂上に近付いて騒いでいた阿部も静かになって、余計に体が強ばるけど何もしない。
外を眺める阿部に対して、俺はその横顔を見つめていたらいつの間にか頂上は過ぎていた。
当たり前のことに胸を苦しめる。
そして何もないまま俺たちは地上へ帰ってきた。
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桜井サラ(プロフ) - ふかやのねぎさん» ありがとうございます!!こちらこそ読んでいただけて光栄です!更新遅めですが頑張ります...! (2020年9月23日 1時) (レス) id: aa947d258f (このIDを非表示/違反報告)
ふかやのねぎ(プロフ) - いわあべの学園ものなんてなかなか無いので嬉しいです!これからも頑張ってくださいね!! (2020年9月22日 18時) (レス) id: 55d9539a79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜井サラ | 作成日時:2020年9月13日 14時