92 ーiwサイドー ページ44
列に並びながら、俺はうるさい心臓を落ち着けようと頑張っていた。
なんでこのタイミングでお化け屋敷なんて言うかなぁ……
このまま行けば確実に入ることになるし、逃げられない。
さっき阿部に言ってくれればいいのにと言ったが、いざこっちの立場になると言えない……
阿部楽しそうにしてるし、断れない。
暗い中から誰かの叫び声が聞こえて肩を揺らす。
入口に近付くにつれて雰囲気も作り込まれていて、映像なんかも流れている。
もちろん俺は見てもないけど。
入ってすぐ阿部が俺を超える反応をしてくれれば、守らなきゃって思えるだろう。
でも文化祭も普通に入ってたみたいだしその可能性は低い。
だから余計に逃げ場がなくて、情けない姿を見せる予感しかしない。
ついに順番が来てしまって、阿部と一緒に説明を受ける。
手、繋ぎたいな……
説明を聞き終わって中に目を向ける阿部の、袖から出てる手をじっと見つめる。
中は結構暗くてどっちに進めばいいのか迷ってしまうほど。
「さっきジェットコースター乗る前、お前手ぇ繋いでって言ったじゃん?」
「え?」
「あれってまだ有効?」
周りを警戒しながらそう聞くと、俺を見つめて瞳を揺らす阿部。
暗いからわからないけど、たぶん顔は真っ赤。
隣で恥ずかしそうに頷く阿部を見て、返事がどうとか関係なく俺は思わず手を握った。
そういえば前は彼女がどうとか言って振りほどかれたっけ……
夏休みに映画に行った時のことを思い出していると、突然目の前に現れる生首。
生首……?
「うわぁぁッ!!!」
勢いのままに阿部に抱きついて、繋いだ手はそのままにぎゅっと握りしめる。
あぁ、やらかした……
恐る恐る阿部を見ると、困ったように眉を八の字にして俺の顔を覗く。
「大丈夫?」
なにこれ、阿部の方がかっこよくなっちゃってんじゃん……!
「よそ見してたからビックリしただけ!……行こ!」
怖すぎる……っ!
こんなところ早く出てしまおう……
俺は手を引いて歩く足を早めた。
でも、出口はまだまだ見えない。
後ろの阿部は余裕そうな顔をしているし――。
「あぁっ!!!!」
これ声出さないなんて無理だ……
ほら、また阿部は苦笑い。
阿部を守ろうという意識なんてもうどこにもなくて、俺はただゴールを探して彷徨うだけだった。
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桜井サラ(プロフ) - ふかやのねぎさん» ありがとうございます!!こちらこそ読んでいただけて光栄です!更新遅めですが頑張ります...! (2020年9月23日 1時) (レス) id: aa947d258f (このIDを非表示/違反報告)
ふかやのねぎ(プロフ) - いわあべの学園ものなんてなかなか無いので嬉しいです!これからも頑張ってくださいね!! (2020年9月22日 18時) (レス) id: 55d9539a79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜井サラ | 作成日時:2020年9月13日 14時