77 ｰiwｻｲﾄﾞｰ ページ29
しばらく電話は繋げたまま走り回っていたけど、いつの間にか切れていて、誰かが切ったんだと勘づく。
これはいよいよ危ないな。
もしかしたら手出されてるかも。
なんて思うと少し手が震えて、隠すようにギュッと握りしめてとにかく走った。
｢体育館の方ではなさそう｣
｢俺らで2階3階は探したから……1階か｣
｢いや、理科棟まだ見てない｣
舞台からすぐ近くにある理科棟。
そっちの方が可能性は高い、とみんなでそこに向かう。
舞台には目もくれず前を横切る俺ら。
｢あ、あれ！どこ行くの！｣
どこにいたのかジェシーの声が聞こえ、樹が対応しているようだったが俺はまっすぐ理科棟へ向かった。
あまり使われないそこの鍵が開いているわけがなく、すぐにトイレだと気がついた。
気がついてよかった。
1番近くのトイレから声がして、俺らは慌ててそこを覗き込む。
――っ！
一瞬で何も考えられなくなった。
気付いたら胸ぐらを掴んで壁に押さえつけていた。
｢お前ら2年だろ｣
｢あぁそうだよ、先輩には敬語使えって教わらなかったか？｣
｢知らねぇ、二度と近づくんじゃねぇぞ｣
｢はっ、どうかな｣
｢お前っ……調子乗ってんじゃねぇぞ！｣
｢ダメ！｣
思わず手が出かけて、樹に止められてふと冷静になる。
横に目をやると阿部と目が合って、その顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
俺が声をかけると、ふっ、と息を吸った。
それが合図だった。
次第に呼吸が乱れて、上手く息が出来てなさそうで。
苦しそうに胸を押さえてはガタッと近くのドアにぶつかって、眉間にシワを寄せる。
｢阿部っ｣
｢っﾋｭ……ｯﾊ、ﾋｭ、ﾊｯ……ｯ｣
｢深呼吸して、ゆっくり吐いて。吸わないで。吐くの意識して｣
俺も正直パニックだけど。
でも俺がそんな素振り見せたら阿部がもっとしんどくなるんじゃないかと思って、必死に抑えた。
苦しそうな表情に胸が痛くなる。
なんで阿部を1人にしたんだろう。
みんなに囲まれるのがあまり得意じゃないってわかってたのに。
誰かに急に触られるのも苦手だって知ってたのに。
俺でも手を払われたくらいなのに。
トイレに駆け込んだ時の阿部は、抵抗なんてしてなくて、いや出来てなくて。
必死に耐えていたようだった。
ごめん、と手に力を込めて背中を擦った。
｢先生呼んできた！｣
慎太郎を見ると視界がぼやけて気がついた。
俺も泣いてたみたいだ。
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桜井サラ(プロフ) - ふかやのねぎさん» ありがとうございます！！こちらこそ読んでいただけて光栄です！更新遅めですが頑張ります...！ (2020年9月23日 1時) (
レス) id: aa947d258f (このIDを非表示/違反報告)
ふかやのねぎ(プロフ) - いわあべの学園ものなんてなかなか無いので嬉しいです！これからも頑張ってくださいね！！ (2020年9月22日 18時) (レス) id: 55d9539a79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜井サラ | 作成日時：2020年9月13日 14時
