60 ーiwサイドー ページ12
「は?」
阿部からそんな言葉が飛び出てきて驚く。
「ほら、夏祭りの……」
阿部は気まずそうに俺より先を歩いて、街灯のないその街に消えていきそうな気さえした。
あいつのことか……
「いや、あいつはさ」
「女の子のことあいつとか言わないの!」
「いやじゃなくて……」
「まずさ、俺なんかと遊ぶより彼女と遊んであげた方がいいんじゃないの?」
冷たく言い放たれたその言葉にひどくショックを受けて、同時に阿部の勘違いを早く改めたいと思った。
でも話は聞いてくれずどんどん突き進む阿部。
「違う、1回話聞いて?」
少しだけ言い争っている間に道の先に阿部の家を見つけて、俺は焦って阿部の腕を掴んだ。
「待てよ」
俺の強い力で思いっきりひいたから体重の軽い阿部は思ったよりもよろけてこちらを向いた。
俯く顔をよく見ると目の端に涙を溜めていた。
話を聞いてくれない阿部に少し苛立っていたが、その顔を見て我に帰る。
「……っ阿部?どした、痛かった?ごめん、っ」
「違う、違うから……」
また体を翻して家に帰ろうとするから両肩を掴んでしっかりこちらに向ける。
「ねぇ、阿部勘違いしてる」
「え……?」
「俺あいつと付き合ってないから」
阿部は心底わからないというような顔をして泣きそうな顔をしながら俺を見つめる。
「だって、また会いたいって……」
「あんなの勝手に言ってただけだよ、俺は……っ」
阿部が好きだ。
勢いで言いかけて言葉に詰まる。
「とにかく、俺は彼女なんていないし阿部と遊びたくて今日も一緒に出かけた。それだけ。何もない。」
「ほんとに……?」
「ほんとだよ」
「……ごめん」
だからって、手を繋ぐ理由にはなってないけど。
ついには泣き出した阿部をゆっくり自分の胸に閉じ込めて、今だけはと温もりを味わった。
しばらくして落ち着いたようで腕を解いた。
「ほら、もう帰りな」
「蓮に泣いたのバレる……」
その言葉、もう少し一緒にいたいって捉えてもいい――?
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桜井サラ(プロフ) - ふかやのねぎさん» ありがとうございます!!こちらこそ読んでいただけて光栄です!更新遅めですが頑張ります...! (2020年9月23日 1時) (レス) id: aa947d258f (このIDを非表示/違反報告)
ふかやのねぎ(プロフ) - いわあべの学園ものなんてなかなか無いので嬉しいです!これからも頑張ってくださいね!! (2020年9月22日 18時) (レス) id: 55d9539a79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜井サラ | 作成日時:2020年9月13日 14時