4 ｰiwｻｲﾄﾞｰ ページ4
何故だ……
今は4時間目。
なのに未だに阿部と話せていないのだ。
黒板の字を写す俺の手は阿部との距離30センチ。
別に俺の覚悟が出来てないわけではない。
俺は何度も話しかけようとしている。
だけど休み時間になると彼は必ずと言っていいほど教室を出ていく。
そんなに俺と話したくないのだろうか。
いや、そんなはずはない。
昨日はああ言っていた。
前から後ろにプリントを回す時も、振り返った阿部と1回だけ目が合ったような気すらした。
でもそれだけ。何もない。
LINEでは普通に会話するし、ただの友達のような関係だ。
俺はその謎が解けなくて頭を悩ませていた。
｢はい、じゃあこの問題。岩本！｣
急に名前を呼ばれ、回していたペンが飛んでいく。
今は苦手な数学の授業。
当てられた問題がわかるわけもない。
そう思いながらペンを拾いにしゃがむ。
拾おうとしたペンは誰かの手に吸い込まれていき、俺の手は空を掴んだ。
手の主を見ると、眼鏡をかけた阿部。
｢ありがと……｣
阿部からペンを受け取るが、その間も視線が合うことはなかった。
｢岩本〜、これ解いたか？｣
マイペースにペンを取る俺に先生が急かす。
えっと、大問2の1？
座り直しながらノートを確認すると、その前の例題すら書き終わっていない。
｢えーっと、まだっす。すいません｣
｢まだって、簡単な問題だから暗算で解けるぞ。
ほら、解いてみろ｣
そんなこと言われたって、話聞いてなかったし…
俺が黙り込んでノートを覗き考えるフリをしていると、前の机からコンッとペン先をぶつける音がする。
そちらを見るとずらしたノートの半ページ。
俺からちょうど大問2の1の答えが見えるようになっていた。
｢あ……x＝3、y＝4です｣
先生は満足したようにまた授業に戻っていく。
｢さんきゅ｣
俺は目の前の阿部の肩をペンで突っつきながら言う。
ﾋﾞｸｯと体を跳ねさせる阿部に少し驚いたが、ビックリしただけか、と納得する。
阿部はメガネをくいっと直しまた授業に集中する。
すげぇなぁ……そりゃ頭いいわけだ。
感心して俺も授業に集中することにした。
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桜井サラ(プロフ) - ゆのんさん» コメントありがとうございます！励みになります…更新頑張ります！！ (2020年5月12日 8時) (
レス) id: aa947d258f (このIDを非表示/違反報告)
ゆのん - 凄く面白いです。更新楽しみにしています。 (2020年5月12日 3時) (レス) id: fc4b9231a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜井サラ | 作成日時：2020年4月25日 8時
