No.93 再会 ページ42
緑谷Side
？｢...手、放せ｣
ズワッと殺気が伝わって来る。
汗が頬を伝った。遠くで駆けて来ていた麗日さんも、動きを止めてしまう程。
？｢...失せろ｣
言葉の重みが伝わって来る。
と、死柄木が突然立ち上がった。心操くんに洗脳でもされているのではと疑う程の無表情で。
ひょいっと、目の前に立った茶髪の彼が片目を見開きながら人差し指で外の方を指す。不思議なことに、死柄木はそのまま指の方向へ行ってしまった。
？｢...はっ、｣
やがて見えなくなった頃、ドッと、彼はその場に倒れ込んだ。女の子らしく尻餅をつきながら荒く息をする。その身体は汗でビショビショだ。けれど、何時まで経っても動く様子は無い。
緑谷｢だっ、大丈夫？｣
思わず屈み込み彼に声をかける。すると彼ははっとして、苦笑しながら頭を掻いた。
？｢すみません。ちょっとキャパオーバーが...｣
緑谷｢すっ、凄い...！強い"個性"なんですね！｣
？｢えぇ、まぁ...兄と一緒の"個性"でして｣
緑谷｢兄弟で一緒！何はともあれ、助けてくれて有難う御座います！｣
彼の手を引き上げ、立ち上がらせながらお礼を言う。
...わっ、身長高いなぁ。僕よりもある。多分20cmぐらい高い。
改めて見たら、顔も整っているしスタイルも良い。青紫色の瞳と、その下にある独特な赤い腫れの様な肌もとても良く似合っている。そしてふわふわの茶髪。
色白い右耳には、大きく金色の弧を描く鉄に、赤い宝石がついたイヤリングをしている。
麗日｢夜明くんに似とるなぁ...｣
警察に連絡し終わった麗日さんが、彼の顔を見てそう呟く。
それは僕も思ったことだった。
考えてみれば容姿も、個性も、つけている物も凄く似ている。イヤリングなんて、両者とも同じ物を片方ずつしかつけていない。何も知らない第三者が見ると、｢お揃い？...片割れなの？｣と思うだろう。
すると彼は突然顔を上げて僕達を見た。そしてガッと麗日さんの肩を掴む。
？｢｢夜明くん｣って...夜明Aのことですか！？｣
麗日｢そっ、そうやけど...どうしたん急に？｣
パァッと顔が明るくなる。すると彼は麗日さんの肩を離し、胸の前で嬉しそうに拳を作りながら僕の方を向いた。
？｢じゃあ二人ともお兄ちゃんのお友達...！？｣
緑谷｢お、お友達って言うかっ...え？｣
｢お兄ちゃん｣
その言葉に違和感を覚えた。
もしかして、
緑谷｢夜明、岬くん...？｣
コクリと、彼が頷く。
目の前に立つのは、亡くなった筈の夜明岬くんだった。
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作者名：綾瀬凛利 x他1人 | 作成日時：2020年7月11日 11時
