【ヒロアカ】嬲り殺し【男主】Ⅱ (ページ12)

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No.62　兄の義務ページ12

ASide

それは職場体験2日目のこと。俺は予め、飯田の兄さんが入院しているという病院に行っていた。

｢失礼します｣と軽く挨拶をし、病室に入る。連絡はしていたので、飯田の兄の飯田天晴さんは笑いながら、わざわざ痛む身体を起き上がらせて俺と目線を合わせてくれた。

A『...別に、辛いだろうから寝てても大丈夫です』

天晴｢そういう訳にはいかないからなぁ。愛する弟の友達なんだから｣

A『...敵のこと弟の友達とか言って良いんですか？』

天晴｢"元"だろ？それに弟の大切な友達だということには変わりない｣

そう言い豪快に笑う天晴さんに呆れ顔を見せる。実際、｢大切な友達｣になれているかは分からない。どちらかと言えば必要な情報をくれる｢復讐仲間｣ではないだろうか。

天晴｢...仇、打とうとしてるんだって？｣

何処か遠くを見ながら言う天晴さんに｢はい｣と答える。自分の気持ちとは裏腹に、安心させる為に作った様な笑顔を浮かべる天晴さんに、俺は溜息をついた。パイプ椅子を取り広げ、ベッドの横に座る。

A『...貴方が望んでいることではないらしいので途中で止めますよ。情報を流したことがバレたら絞められるの俺だし』

わざとらしく腕を組み、誇らしげに言う俺を見て天晴さんが笑う。すると天晴さんは腕を伸ばし、俺の頭に乗せ、その後ゆっくりとなぞる様に撫でた。そして、優しい目をして笑い言う。

天晴｢キミは、優しいんだな｣

A『まさか。俺なんかが優しかったら人類皆聖母じゃないんですか』

天晴｢ははっ、面白いことを言うね。...けど、キミが優しいのは本当さ｣

トンッと、俺の胸に人差し指を置く。俺は口をきゅっと結び、眉毛を逆ハの文字にした。

天晴｢キミは、自分の心に嘘をついている｣

A『...ウソなんか、ついてない』

天晴｢それは、本当？｣

A『本当です』

天晴｢本当に？｣

A『しつこいですね。本当だと言っているでしょう？』

馬鹿馬鹿しい。これ以上付き合っていられない。

その思いを込め、俺は胸につけられた手を払いのけた。荷物を背負い、病室の扉に手をかける。

けれども俺は、次の言葉で立ち止まることになる。

天晴｢キミの弟、夜明岬に会ったよ｣

時間が止まった、様な気がした。