No.93 亡 ページ43
ASide
A『おはようございます！』
相澤「おはようございます...」
パッと手を上げ、職員室の入口から足を踏み入れる。
右手脇に抱えた消太さんを無理矢理立ち上がらせ背中を叩いた。
A『ほら！朝は元気に！！』
相澤「無理ですよ...俺早朝に叩き起こされて全然寝れてないです...」
香山「可哀相に...でも昨晩お楽しみだったなら頑張らなきゃね！」
相澤「楽しんでなんかありません！！」
A『ははっ...すみません香山さん、俺先に校長室行ってきます』
ペコリと一礼し、職員室から出る。
俺はただ消太さんを此処に連れて来ただけだ。それに午後には店を開けなければいけない。そろそろ常連さんにキレられる頃だろう。早くしなければ。
A『失礼します』
扉を数回叩き、返事を聞いてそう発する。中にはこの前と変わらない景色が広がっていた。
根津「あぁ、東谷くん...目の調子は？大丈夫だったかい？」
A『えぇ...あの後いつも通り縫い合わせたので』
そう言い、かつて傷口があった目元を一撫でする。忽ち音を発て皮膚がずり落ちた。指の腹でなぞると、黒く太い糸が瞼と頬の肉を繋ぎ合わせてるのがわかる。
幼い頃、父親に刺されて出来た傷だった。機嫌が悪かった父に当たられ、鋏で左目を刺されたのだ。その時にヒビ割れて顔の左側一体に傷が広がってしまったので、糸で縫い合わせてある。
A『俺の"個性"、便利なもんですよ。時間を進めたら勝手に皮膚が伸びてきて隠してくれるんですもん。母の遺伝子に感謝です』
根津「父親の"個性"ではないのかい？」
A『はい。これは母の遺伝で...父は"酒呑童子"なので』
根津「酒呑童子...丹波の大江山に住んでたと言われる酒好きの、逸話物のかい？」
A『それです！逸話通り酒好きで強情で強欲だったので、影で鬼って呼んでましたよ』
笑いながらそう言う。
バレたら何度も殴られて絞められていたのを覚えている。痛かったが、当時はそれ以上にいつも構ってくれない父親がこんなにも瞳に自分の姿を映してくれているのが嬉しくて堪らなかった。今思えば、その頃から俺は少し可笑しかったのかもしれない。
A『まぁ、今となっては亡き思い出ですけど...』
静かに呟く。
季節に似合わない冷たい風が、頬を撫でた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 86人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
綾瀬凛利(プロフ) - 金木犀さん» わわわわ久しぶりに開いたらコメントが来てた...返信遅れてごめんなさい。ありがとうございます！楽しんで頂けたなら光栄です！ちょくちょくですが更新をしていきますのでこれからもよろしくおねがいします！ (2022年2月11日 0時) (
レス) id: a1fcb849ff (このIDを非表示/違反報告)
金木犀 - 面白くて一気に読んでしまいました。素敵な投稿ありがとうございます (2022年1月19日 23時) (レス) @page43 id: b5d4ecbe80 (このIDを非表示/違反報告)
綾瀬凛利(プロフ) - ナビィさん» ゾーン！！？ちょっ、見て来ます(( (2021年4月6日 18時) (レス) id: a1fcb849ff (このIDを非表示/違反報告)
ナビィ(プロフ) - 綾瀬凛利さん» 注目順で上から見てると綾瀬凜利さんの作品並んでるゾーンあるんでそこでですよー。素敵でした！ (2021年4月6日 16時) (レス) id: 8e0d72a18f (このIDを非表示/違反報告)
綾瀬凛利(プロフ) - ナビィさん» コメントありがとうございます！ドラマとかシんだ後ホンッッット回想シーンとか出てこないで欲しい。リビングが洪水する(大事件) てか見つけるの大変なのに結構見てるのスゴイですね、ありがとうございますっっ(土下座) (2021年4月5日 23時) (レス) id: a1fcb849ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：綾瀬凛利 x他2人 | 作成日時：2020年12月7日 17時
