私達は双子で私は苦労人。【すとぷり】

スーパーウルトラ超ダサい成人女性が一人。 ページ15

貴方side

『私、先帰るよ』

スマホとカバンを拾い上げ、雨の中走り出す。

「ちょ、待てよ！」

愛おしい人の声がする。
でも今は、屈辱的で仕方がない。
キラキラっと、街が光っている。
鮮やかな光を灯した夜の街には、まだ知りもしない未知の世界が広がっている気がする。
こういう時って、追いかけてくるもんでしょ。
ヒーローがさ。
でも生憎、私はヒロインではないらしい。
その証拠に声がしない。

雨音

雑音

騒音

あの愛おしい声は聞こえない。

好き

大好き

愛してる

この言葉達は愛の象徴。

辛い

怖い

寂しい

この言葉達は孤独の象徴。

嫌い

大嫌い

消えちゃえ

この言葉達は悪の象徴。
私に似合うのはきっと悪の言葉。
シンデレラだったら意地悪なお母さん役。

『いいなぁ…』

ボソリと呟いた声は細かい砂のように簡単に風で吹き飛ばされてしまう。
はきっりしない意識の中、たどり着いたのは近所の公園。
雨の中ブランコに乗ってると誰か来てくれるんでしょ。
でも、どうやら現実はそう甘くはないみたいで。

『つめたー』

子供のように語尾を伸ばす。
雨でベタベタのブランコに座り、当然の結果になってしまった。
ツーっと、目尻から頬にかけ、水伝ってくる。

『雨だねぇ』

傍から見ればおかしな人だろうに。
それでも、隣に誰かがいる気がして話を続ける。

『私さぁ、高校の卒業式の時に振られちゃったぁ』

可愛子ぶってる女子のような言葉遣いをする。

『約1年半付き合ってた彼とだよ？
ありえ、ない、でしょ、ふつ、う』

言葉が途切れ途切れになる。

『6年前のことなのにさ、今更、掘り返してさ。
は、は、だっさ…』

雨が次第に強くなり、スーツはぐしょぐしょ、髪はぐしゃしぐゃ。

風邪ひくかな。

明日のスーツどうしよう。

仕事、休んじゃおっかな。

そんな甘い考えが脳内を巡る。
まるで、初めて迷路に入った幼子のように。
ゆっくりと。

『この6年間、頑張って忘れよう、忘れようって、思ってさっ。
それでもっ、それでも、忘れられなかった。
好きだから、大好きだから、愛してるから…』

声が掠れる。
下を向いて、雨が当たらないようにしているはずなのに、何故か顔が濡れてしまう。

『羨ま、しいよ…』

人ひとりとしていない薄暗い公園。

雨の音しか聞こえないような、静かな公園。

誰も来ようとしなさそうな寂しい公園。

『大人気ないよね…今更さっ……』

そこに、泣き崩れるスーパーウルトラ超ダサい成人女性が一人泣いている。

スポットライト独り占め。→←雨は悲しみの象徴とか、誰が決めたのさ。

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