ポートマフィアのメイドさん

とある日 ページ7

「この頃よく来るなぁ。なんだよ、暇なのか、“ゼロ”？」

男は酒を飲みながら私に問いかけた。相変わらず口が悪い。

「煩いな。射撃場なんて女は来ないからな。寂しくてお喋りになったのか？“ナイン”」

私は銃を取った。イアープロテクターなんてこの店にはない。そもそも普通の客なんて来ないからだ。違法の店だ。表向きは射撃場だが、銃の違法売買が行われていたり、悪い客が飲みに来たり。

「おおっと……怖いねぇ…昔のよしみじゃねぇかよ。」
「知るかよ……にしてもよく潰れないな、儲かってるのかここ…」

走りながらパカパカと立ち上がる人型の木の頭を撃ち抜く。操ってるのはナイン。ボタンをパチパチしてるだけの簡単な仕掛け。チープのゲームだ。

「儲かってねぇよ。ポートマフィアさんに八割持ってかれちまうからな。ただその代わり平穏にやらしてもらってるよ。」
「へぇ、平穏ねぇ………それは良かった…な！」

パン！と乾いた音が響いた。私がナインの銃を撃ち落とした音だ。
こちらに銃を向けていたナインは痛そうにして、手首をさすっている。

「おいナイン…何しようとした……？」
「ってえなぁ……ちょっと腕を見てやろうと思っただけじゃねえかよ…………」
「ふざけるなよ。」
「すまねえって！怒んなよ……こええな!」

撃たれたら冗談じゃ済まない。

「怖えメイドだ、全くよぉ、職場でも殺気ダダ漏れだろどうせ！！」
「職場ではメイドだ。そっちはそっちで穏やかにやってるし、ポートマフィアとはいえメイドまでに銃は持たせない。」

ナインはへー、へー、とブス枯れてしまった。昔は良くコンビを組んでいたからか、今でも世話になっている。

「なら、お前に銃なんぞもう必要じゃねぇだろうが。」
「腕を鈍らせたくないんだよ、ナイン。」
「お前も光には馴染めねぇな……もうメイドやってて何年だよ。」
「１４年。もうすぐ１５年になる。」
「諦めねえのかよ……いっそ首領の座でも奪っちまえよ。お前なら負けねえだろ。」
「殺されたいかナイン、私が今こう生きていられるのは首領のおかげだ。それに首領は強力な異能力の持ち主だ。勝てないさ。」
「へー、へー、そうですかそうですか。光に馴染めないならいっそ闇に染まれば良いのに、お前も難儀なヤツだ。」

光の中には一生染まりきれない………ならば闇に染まればいいのか。
私は光になる為にポートマフィアながら、人に世話を焼く仕事をして、側に銃が有っても、それで人を撃ち殺さない為に、境界でメイドをしているのだ。


そう、言い聞かせた。

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