ポートマフィアのメイドさん

１９ ページ36

いつも優しい中也様。
昨日は私の醜態を晒し、引かれるかと心配していたが、彼は嫌な顔一つせずに助けてくださった。いつかご恩を返さなければならないだろう。

私に課せられた任務は二つ。
一つ目は、人虎の件で隠れてしまって居るが、ポートマフィア内の清掃もとい、裏切り者の暗殺だ。
因みに今日中にターゲットを殺して、密輸船のコンテナの一つに紛れる手筈である刺客も殺さなければならない。
さもなければ、ポートマフィアの数十人の武闘派の異能力詳細が他組織に安売りされてしまう。
首領もまさかの裏切りに少々驚いており、急なスケジュールとなって居る。
私はメイドという立場を利用し職務室で２人きりになったのち殺害する予定だ。ので、不自然な行動は逆に命取りで、チャンスは一度きり。相手の部下は人間を透明にする能力を持ち合わせて居ると同時に、他国の人脈を持って居るらしく投げられたら、やはり御仕舞いだ。
なので、絶対殺す。
幸いターゲットの部下全ての首をかっ切らなければいけないわけではないのが救いである。
弱いと楽しく無いからな。

もう一つは、これもまた人虎の件で隠れてしまって居るが、ヨコハマ郊外でポートマフィア下級構成員が殺害された。
頭のおかしいバカが喧嘩を売ったらしいが、その末端があっさり捕縛され今鎖に繋がれて居るので、私が拷問担当に変更された。紅葉様の部下が口を割らなかったそうだからだ。
任せろ。拷問には自信があるんだ。なんせ、自分が散々やられたからな。

「首領、紅茶が入りました。エリス様もお呼びいたしますか？」
「ああ、有難う。エリスちゃんと一緒にお茶したいけど、仕事の話だからね。遊ばせておいてあげて。」
「畏まりました。」

メイドとしての日常は、あまり変化が無い。強いていうならば、首領の仕事関係のお手伝いもするようになったということくらいで、案外充実して居る。

「ところで、A君、計画は進んでいるかね？」
「はい、抜かりなく。必要ならば情報も絞り出しましょうか？」
「拷問する必要は無いよ。彼の手口は高が知れているし、彼はまだ私の殺害を依頼する殺し屋に目処を立てる少し前の段階だからね。」
「…………抜かりなく。例え刺客が首領を襲おうとも私が全て、処分して見せます。」
「頼もしいね。」
「ありがたきお言葉です。」

ご馳走さま、と首領がカップを置いた。それを受け取るときに、首領の手が私に触れた。

「今度、２人で食事にでも行かないかい？」

＊→←１７

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す