ポートマフィアのメイドさん

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「ちょっと遠くに行くって………なんだよそれ………」

武装探偵社からナインの家に帰ってきたのだが、ナインは居なかった。
代わりに置き手紙が一枚。
内容はざっくりと『母親が見つかったんで、国外に行く。もうお前には会え回かもしれない。』というものだった。
前々からナインが母親はアメリカの〜と場所を話して居たのは知っていた。３０人の中で唯一、実の親が判明しているのが、ナインだった。それにまだ生きている。
いつか絶対会いに生きたいと言っていたが、これは少し唐突すぎやしないか。
居候だが、私は一応同居人だしあとは好きにしていいって言ったって黙って出て行くことないじゃないか。

それに私たちは相棒だった。
１０年以上の付き合いじゃないか、物がごろついた時から一緒にいたのに、少し薄情じゃないか。

「クソナイン……薄情者。死ね、死ねよ本当。」

仲が悪いわけでも無かったのに、酷いじゃないか。なんだ、私は愛想をつかされたのか？もう男遊びは辞めたし、せっかく心にけじめがついたところだったのに………

「何がまたいつかだ、アホ。」

私は置き手紙をビリビリにしようとして紙の真ん中に手をかけた。
まあ、あいつのことだからまたひょっこり現れる…きっと、どうせまた元気にしてんなクソ女とか言ってナインは私の前に現れるんだ。
今は少々複雑だが、あいつがずっとやりたいことだった母親に会いに行く事が出来るのなら私は１０でも２０年でも土産話を待ってやる。………私は、一度はあいつと一緒に一生を過ごしてもいいのではないかと思った。
そりゃあ私だって子供は欲しい。いや、ずっと欲しかった。ナインは案外女には優しい奴だった。

それに、ナインは私を………私を女扱いしていた。

たまに、飯を奢ってもらったり、服を買ってやろうかと言われたり、酒に誘われたり。私はあいつと肉体関係だって持っていた。

ナインは私が好きだったのかもしれない。

ガツガツした性格のナインは、私が目を合わせると少しよそよそしかった。

何でこんな簡単なことに気が付かなかったんだろう。彼は私が好きだったんだ。自意識過剰かもしれないけど、ナインはもっと女らしくしろ、あれがお前に似合いそうだ、男には近づくな、とうるさかった。

「……………いい歳こいて腰抜けめ…。」

何にもしないで去るなんて腰抜けだ。あのバカめ。あいつが言ってくれれば私は………



後悔先に立たずというが、私は彼にはもう一生会えないのだろう。
置き手紙の何度も消しゴムで消した跡を擦ってみたら、『愛してる』とナインは書いて、消したからだ。

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