ポートマフィアのメイドさん

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「太宰様……？」
「お姉さん、私とどこかで会ったことあったっけ？」

太宰様はここまで言っても解らない様だった。無理もない、今の私はメガネもしてないし、髪もずいぶん長くなったし、下ろしている。そして何より、今私は酷い顔をしているだろう、特に目が。

「いえ……私はこれで。君、これで夕飯でもたべな。」

少年に一万円を渡してその場を去ろうとする。少年の笑顔が眩しい。みすぼらしい格好をしているし、ロクでもないところから来たんだろうけど、心優しい少年なのだな、と微笑ましく思った。が、今の私には無自覚に与えられた皮肉ぐらいにしか感じない。

「待って！」

太宰が私を引き止めて言った。はっと見開かれた目には喜びの色も感じられる。

「もしかして……Aさん？どうして、貴女がここに………」
「太宰？知り合いか？」

やはり、雰囲気が変わり過ぎていたのか。彼が気付かないなんて相当な変わり様だっただな、と1人で納得した。
太宰様は随分驚かれている様子だが、私の目を見て何かを悟った様に笑った。

「Aさん、これからどこか行くところでもあるの？」
「いえ、特にないですが、もう太宰様と何処かに行く義理もありませんのでこれで失礼いたします。」
「そんな〜連れないな。ちょっとくらいいいじゃないの。んー、相変わらず美、人♡今からでも遅くない！一緒に心☆中！！」
「やめてください。」
「おい、やめて差し上げろ、嫌がってるだろうが！！」

ブレない太宰様は昔こそは笑いながら許したが、正直今やられると普通にイライラするからやめてくれ。いや、空気を読んで茶化してくれたのだろうから、逆効果というやつだ。とにかく、昔、というか三日前を思い出させるのはやめてくれ………

「ほんと、太宰がすみません……こちらでよく言っておくので……」
「大丈夫です………あ、貴方(A)は？」
「国木田、国木田独歩と申します。」
「AAです。またお逢いしたら、お茶でも付き合ってください。」
「あ、はい、お誘いありがとうございます、では、」
「さよなら、」

太宰様は今も昔も変わらず、元気でやってるってことで良いだろう。
取り敢えず、ナインの所にでも行って居候しよう。ちょっと、路上で４日目を過ごすのは嫌だ。
１週間くらいしたら、ポートマフィアに(書いといた)私の遺書でも届けに行って、夏目先生の所にでも行って挨拶して、気乗りしないけど、諭吉さんに会いに行こう。
全部の人にお礼を言ったら、ひっそり、バレない様に死ねば、私の人生は充分、幸せだったと思う。

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