参拾玖話 ページ1
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「にゅやァ…船はヤバい、船はマジでヤバい。
先生、頭の中身全部まとめて飛び出そうです」
「そのまま死んでも良いのに」
船で酔っているせんせいに向かって素直にそう言うと反応する元気もないのかぐったりとしていた。
まぁせんせいの気持ちも分からなくはないけど。私も乗り物酔いはする方の人間だしね。
「起きて起きて殺せんせー!!見えてきたよ!!」
倉橋さんの言葉に私も外を眺める。
目に映るのは緑がいっぱいの島、…いやぁついにここまで来ちゃったか。
ある意味不安要素しかないけどしょうがない、もう後戻りは出来ないんだから。
「ようこそ普久間島リゾートホテルへ、サービスのトロピカルジュースでございます」
そうやって差し出されたジュースの液体の溶け方が不自然だった。
飲まない方がいいかも、そんな言葉を口に出す前に皆は既に飲んでいた。
……大丈夫だといいんだけどね。
「A、飲まないのかい?」
「…………」
無言でジュースを差し出して太宰さんにも分かるように見せる。
「……成程、だから君は飲まなかったんだね」
「太宰さんは大丈夫でした?」
「勿論だとも、だァって私は日頃の行いが、」
「あー、はいはいそーですね」
「適当じゃないかい?」
それから太宰さんに空返事を返して辺りを見渡した後に連絡が来てるか携帯をチェックする。
…特に連絡は何も無いみたいだからまだ大丈夫かな。
「例の
「ヌルフフフ、賛成です。
では石川さんはどこの班に入りますか?」
あ、確かに。と他人事のように思う。
不安要素が消えない時、何かをすることってあんまり好きじゃないから。
「じゃあウチの班でいいんじゃない?」
「いいじゃん、ウチの班はダブルで委員長いるし!」
片岡さんと前原くんの言葉に甘えて1班(らしい)に入ることにした。
「ハングライダー?」
「うん、2人乗りなんだけどね」
どうやら空を飛ぶらしい。
…せんせい、これで空飛ばなくても自分で飛べるよね。自分で飛んだ方が断然早いと思うんだけどな。
「A、俺と一緒に乗らね?」
「前原くんは怖いから磯貝くんが安全かなって思ってたんだけど」
「ひでぇ!」
「…嘘だよ、お言葉に甘えて一緒に乗らせて」
太宰さんの選択肢もあったけど常に触れてる状態だと異能力が発動できないから却下。
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たびのひと - はじめまして!とても面白いです!一日で全部読んじゃいました!更新待ってます! (2020年5月18日 23時) (レス) id: 06a128996a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カノ | 作成日時:2020年1月12日 2時