第三話 ページ5
「げほっ…!!何をする」
咳き込みながら2人を睨みつける
「なぁ夜斗、いきなりどうしたんだ
この子を連れていくなんて…」
「そうだよ、らしくもない…」
2人の言葉に少し間を置いて
夜斗は諦めたようにため息をついた
「…確証はないが
恐らくその子どもは半妖だ」
「半妖だと?」
「あくまでも恐らくだけどな」
「でも、半妖なんて産まれるはずないだろ?」
「確率が低いというだけだ
それに、この腕の痣…
あの時見たものと似ている…」
あの時、その言葉に
弥鳴の耳がピクリと反応した
「…確かめるために連れて帰る
違ったらその後に人里まで
送り届ければいい」
「……わかった」
「弥鳴!?嘘だろ!?」
「劉、諦めろ
甘美月の花は次の満月までお預けだ」
「だぁ〜!!!
甘美月楽しみにしてたのにっ!!」
チッと盛大に舌打ちをして
ぐしゃぐしゃと頭をかきながら
悔しそうに叫んだ
「悪いな、劉」
「……次の満月のときは
夜斗が沢山摘んでこいよ」
「あぁ、約束だ」
「よしっ!!言質とったからな!?
忘れんなよ!」
尻尾をぶわっと広げ興奮気味にそういった
「次の約束も済んだし、
そろそろ行くぞ
この子の傷も手当てしないと」
「はいはい、行きますよ!」
麓の家を目指して闇夜に消え
森が再び静けさに包まれた
辺りに血肉の腐敗した匂いが
充満してきた頃、
僧侶の格好をした男が
1人、フラりと現れた
「…やはり鬼は使えないな」
牛鬼の骸を蹴りながら忌々しげに呟く
「さて、厄介だな……」
3人が飛び去った方向を見つめていた
その時、男の背後から子供の足音が聞こえてきた
「なぜ貴様がここにいる」
「あーあ、どうするのかな?かな?」
クスクスと笑いながら現れたのは
鬼の首を片手に持った幼女だった
「あの御方にどう説明するのかな?かな?」
ムシャムシャとそれを喰べながら
幼女は愉しそうに男を見つめる
「ちっ……」
“潜、しくじったのかい?”
凛と澄んだ声が男の頭に響いた
「っ…!申し訳ございません」
潜と呼ばれたその男の顔に緊張が走った
“誰にでも失敗はある
けど、失敗で終わらせないのが潜だろう?”
「必ず…あの娘を手に入れて参ります」
“期待しているよ…
さて、奏には別で頼みがある
戻っておいで”
「はい…!我が君…!」
奏と呼ばれた幼女は
うっとりとした表情を浮かべ
先程まで喰べていたそれを投げ捨て
闇の中へと消えていった
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