病は治ったはずなのに【イゾウ】 (ページ49)

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涙で鍵をページ49

小走りで部屋に行くとイゾウさんが蹲ってた。

『イゾウさん、どうしたの？』

「A！良かった…！」

イゾウさんに抱きしめられて窒息しそう。なんとか顔を上げて胸筋から顔を出すと、頬にポタポタとイゾウさんの涙が落ちてきた。

『ちょ…最近泣きすぎじゃない？』

「歳とると涙腺弱くなんだよ…本当に、もう……」

涙を着物で拭ってまた泣く、悲しそうなイゾウさんに心が痛む。

『何で泣いてんの…？』

「Aが、居なくて…ｽﾞｽﾞｯ捨てられだのがと思っ…った」

『まず鼻かんで、ちゃんと喋ろう』

ティッシュを取って鼻を噛むと少し落ち着いたようだ。

『勝手に居なくなってごめんなさい、でも甲板に出ただけだよ？泣くことないと思うのが正直なところ』

「見張りの時怪我してたから…甲板も十分危険だ。そんなとこに行くわけないと思ったら…捨てられたとしかっ、考えられなかった。どうか、安全なとこに居てくれ…」

頭を下げられて私は気まずい。イゾウさんの頭を抱えるように優しく抱きしめて応えた。

この扉を出た瞬間からイゾウさんの涙が流れる。だから私はここにいるべきなのだ。私を大切にしてくれる人を悲しませないようにしなければならない。

『ごめん、何度も繰り返して』

「本当だよっ…！俺のことも、少しは考えてくれ！」

思い返してみると今回が初めてではない。外に出て攫われたり、怪我したり、イゾウさんはいつも私を守ってくれた。
それに胡座をかいてイゾウさんの気持ちを無視していたのは私だ。こんな顔をさせるほどに私は身勝手で心配をかけていた。

『もう変な気は起こさない』

「ああ…」

『イゾウさんを泣かせるようなことはしない』

「…ありがとう」

こんなことをしているのにイゾウさんは私を許してくれる。だからもう二度と勝手な行動をして、この優しい人を傷つけない。

部屋の扉が大きく見えた。鍵はかかっていないのに、絶対に開かないような気がする。
開けた瞬間イゾウさんが苦しんでしまうんだ。それなら私自ら鍵をかけたっていい、イゾウさんが笑顔でいてくれるならそれで満足だ。