懇願2 ページ47
島に着いてから二日目の夜、仲間のカシオがAにお土産を買ってきてくれた。
まず甲板で俺が確認すると、可愛らしいコップが入っていた。
「この装飾、頑張ってやったんだぜ！」
マスキングしてから砂で傷をつけて模様を作ったらしい。海賊とは思えないような平和な犬の模様に、なんとなく温かい気持ちになった…が
「悪いが受け取れないな」
「何で？」
「どうして船にガラスのコップが少ないか考えてみな」
ガラスだと船の揺れで割れてしまうからだ。だから木でできたジョッキを少し加工して長持ちするようにしている。
「なるほど、割れて怪我させる訳にはいかないもんな…残念だけど自分で使うわ」
寂しそうな顔で去っていった。飯を持って部屋に行くと、さっきまで俺といたカシオがドアを開けて中に居るAと話していた。
『え！割れないようにめっちゃ気をつけるから貰いたい！』
「いやいや、イゾウもAが怪我したらって心配してんだ」
『多少の切り傷くらい別にどうってことないのに…』
Aは部屋に居るので見えないが、カシオは俺に気づいたようだ。
「こう言ってるんだけどどうだ？」
「ダメだ」
『私一滴でも血を流したら死ぬって思われてんのかな、そんな軟弱じゃないんだけど』
カシオは苦笑いをしながら去っていった。埒が明かないと思ったのだろう。
美味しく夕飯を食べながらもAは文句を垂らす。
『せっかくカシオさんが心を込めて作ってくれたのに…』
「心がこもってたら毒でも貰うのか？」
『いや毒に愛は狂ってるでしょ。コップはもらってもいいじゃん』
「怪我したらどうするんだ。それに貰う機会は今回だけじゃない、諦めろ」
残念そうに口いっぱいに米を詰めるAがリスのようで可愛かった。
そして夜、拗ねたAは寝る時に正面から抱きついてきて
『明日の準備の邪魔してやる』
と言った。
俺をどうしたいんだコイツ愛らしいにも程がある。Aが潰れてしまいそうなほどに抱きしめ返して、今日はそのまま眠った。
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年8月6日 18時
