大真面目2 ページ45
イゾウはAを部屋に入れると肩を掴んだ。
「どうして一人で出た!」
『お手洗いに行きたくて…』
「俺を悲しませたくないと言ったよな?」
『うん』
「急にいなくなったAに、俺がどんなに心臓が痛かったか分かるか?どんなに焦ったか、怖かったか分かるか?」
イゾウは語りかけるようにゆっくりとAの目を見て話した。Aはイゾウの顔を見れなかった。
『ごめん』
「いい、今回はいい。でも次から外に出る時はどんなに俺が寝不足でも、どんなに深く眠っていても、起こしてからにしてくれ」
『分かった』
イゾウは呆れたように息を一つ吐いた。そして布団に横になるとAを包み込んだ。
「勝手にどこかに行けないように」
『腕が重いでございます』
「これなら抜け出せないだろ?」
楽しそうに控えめに笑うイゾウにAは微笑んで目を閉じた。
何回かキスが降ってきたがそれはそれとして眠りについた。
二人が抱き合って眠った頃、部屋の外で不審な動きをする奴らがいた。
「流石にやめとけって」
「どうする、イゾウがAに手錠とかつけてたら」
「それでも部屋を覗くのはプライバシーの侵害だ」
「プライバシーより大切なのを守るためだ」
サッチとビスタだ。二人とも身近にあった重い愛に寒気を感じて、なんとなくイゾウたちの部屋に引き寄せられたのだった。
慎重に慎重に、少しだけ扉を開けて中を覗くとイゾウの背中が見えた。
二人は小声で話した。
「Aの気配はするけどイゾウで見えないな」
「抱きしめ合っているようだし、特に問題なないんじゃないか?」
「ぽいな。杞憂か」
イゾウは誰か来る気配を感じ取って起きていた。扉が閉まり、気配が遠のくのを感じると一つ舌打ちをした。
「勝手に覗くなよクソが…」
もしAが裸だったらどうしてくれる。あり得ない話じゃない、自分達は恋人同士なのだから。
それにAの寝相はまあ悪い方。寝巻きなんて簡単にはだける。肌が見えたり下着が見えたり、そんなことはザラにある。
だからやめてほしい。一回銃弾を頭にぶち込んで手術しないとわからないのか。
イゾウはAを大切そうに抱きしめ直して寝た。
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作者名:はなやぎ | 作成日時:2023年8月6日 18時