大真面目 ページ44
その日の夕飯の時間、イゾウは二人分の食事を取りに出た。
「イゾウ、Aは？」
試すようにサッチは聞いた。イゾウは軽く大丈夫だと答えて、Aの好きなおかずを皿に盛り付けていく。
「何で部屋で食べるんだ？」
「Aが望んだんだ」
「本当に？」
「ああ」
イゾウがいなくなった食堂で、サッチとビスタはどちらからともなく歩み寄った。
「本当にAがそんなこと望むと思うか？」
ビスタが言った。サッチは不安そうにリーゼントを触りながら答えた。
「今は、今はな、Aを信じるしかねえさ。イゾウも嘘をついているわけじゃなさそうだ」
「すれ違ってるのか、本心でAが言ったのか…どっちかだな」
「どんなに考えたって正解は出ないだろ」
「そうだな、イゾウもバカじゃない。本気でAが嫌がることはしない…と信じよう」
二人はどこか心にとっかかりを残したまま別れた。
一方Aとイゾウは楽しく会話をしながら美味しい夕飯を食べていた。
『これ何ドレッシング？』
「色々混ぜた秘伝のレシピがあるんだよ、教えない」
『ドレッシング自体を作ってるのはコック様方なんですけどね』
「それはそうだな」
皿を下げるのもイゾウ、Aはイゾウに言われてからやっと風呂に入って寝る。
そしてイゾウはAが寝てからまた動き出す。
何も変わらない。お互い心地良い日常だった。
変わったことはAが夜中にトイレに行こうと起きたことだった。
イゾウは寝ていて、Aはなにも気にすることなく半目でトイレに行った。
トイレから出て部屋に戻ろうとするとイゾウが勢いよく扉を開けて廊下に出てきた。
「A！」
『はいっ！？』
イゾウの声で目がすっかり覚めてしまった。
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年8月6日 18時
