真面目3 ページ43
サッチはこれは自分だけでは無理だと察した。
その結果呼ばれたのは二人と仲の良いビスタだった。
「A、悪いが俺もサッチに賛成だ」
『サッチは…私はイゾウさんに頼らないとなんもできないって言った。だから私はイゾウさんと居るべきじゃないの』
ビスタとサッチは固まった。サッチはまさか自分の言葉が、思っていたのと違う捉えられ方をしていたとは思わなかった。
ビスタは衝撃のあまり何も言えなかった。
『イゾウさんに謝ってくる』
「待て!いいかA、無理やりイゾウと引き離そうとはしない…でもな、自分の思いや気持ちは見失うなよ。求められたら絶対に助けるから」
『大丈夫だよ。私、思ったことはちゃんとイゾウさんに言ってるし、言える』
Aは今までも意思表示はハッキリとしていた。
Aは恐る恐る扉を開けて部屋を覗いた。イゾウはAの布団に倒れていて、グスグスと鼻をすする音と口の端から漏れる声が聞こえた。
「…ッ!!A!」
イゾウは驚いたように顔を上げた。バツの悪そうな表情のAを見てまた顔をくしゃくしゃに歪めた。
「逃げたんじゃ、なかったのか?」
『逃げるわけないじゃん…』
「おれは、こんなにっ…酷い…ことをしたのに!」
『酷いなんて…ごめんなさい、今まで私に色々してくれてたのに気づいてなかった』
Aは頭を下げた。イゾウはAの腕を引っ張って自分の胸に寄せた。
Aは泣きじゃくるイゾウを放っておけるほど非情になりきれなかった。やっぱり自分に無償で無限の愛をくれるイゾウを悲しませることはできなかった。
「聞いて…くれるか?」
『何を?』
イゾウはさらに腕に力を込めて、Aの顔を胸に密着させた。Aは息苦しそうにイゾウの顔を見上げて鼻を出すと、イゾウはAの目を手で覆った。
「Aが部屋から出るたび、また誰かに襲われるんじゃないか、危険なことに巻き込まれるんじゃないかって思うんだ。そんな想像をして、不安で泣いてしまうんだ…俺は………」
Aはゆっくり口を開いた。
『私はイゾウさんを悲しませたくない』
揺るがない本心、イゾウは少し嬉しそうに微笑んだ。Aから見えないその笑顔は綺麗だった。
「ありがとう…なら、俺に悲しい想像をさせないでっ…」
どこにも行かないで…と絞り出すように言うイゾウの背中手をまわして応えた。
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作者名:はなやぎ | 作成日時:2023年8月6日 18時