病は治ったはずなのに【イゾウ】 (ページ42)

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真面目2 ページ42

少し考えて、やっといつもと何が違うのかがわかった。

ご飯がない。いつもはあるのに。

Aはやっと立ち上がった。サッチは不思議そうな顔で見送って、帰ってくるのを頬杖をついて待っていた。

「何、ただの喧嘩じゃないの」

『泣いてるイゾウさんを捨ててきた』

「…なんて？？」

『泣いてる、イゾウさんを、捨ててきた』

「聞こえなかったわけじゃねえよ！！」

落ち着けオレ…と呟くと、サッチはお茶を淹れ直して戻ってきた。

「ちょ〜っと待てよ？わからないことがいくつか」

『？』

「泣いてるイゾウ？捨ててきた？喧嘩で？」

『イゾウさんのことはよくわからない。でも面倒だった』

Aは海藻サラダを口に入れた。なのにいつもと同じ味じゃない。

『味変えた？』

「いや？ドレッシングかけた？」

『あ』

Aはドレッシングを手に取った。そして首を傾げた。

『どれだっけ』

「ええ…大丈夫か？」

『これじゃない感』

「わからん、ラベル変わったのあるからじゃね」

いつもどうしてたっけ、自分は何を食べていた？Aはわからなかった。普段はどうやって生活をしていたっけ。

『全部…』

「やめろ早まるな全部かけるなんて正気の沙汰じゃないぞ」

『そうじゃなくて、いつもどうやって生活してたかなって思って…全部、イゾウさんだ』

イゾウが全部やってくれていたから、Aは何もわからなくなっていた。

サッチはそれを聞いた瞬間鳥肌が立った。身近な家族のことなのに、二人のことを知らなかった。そしてAが何もわからなくなるほど、イゾウが甘やかしていたことにゾッとした。

「A、これ真面目な話な」

『なに？改まって』

「イゾウから離れろ」

『え…でも…』

「現にお前どういう状態か客観的に考えてみろ。イゾウがいないとわからないことだらけだ。」

そう、だから自分は結局イゾウの所へ戻らないといけないと思っていた。
Aはご飯を食べすすめながら考えていた。