病は治ったはずなのに【イゾウ】 (ページ40)

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純愛4 ページ40

イゾウが皿を下げる。Aはまた一人取り残されてしまった。
なので汗で濡れた寝巻きから着替えて待っていた。

「歯ブラシ持ってきた」

『ありがとう…』

さも当然のように必要なものを持ってくるイゾウは未来が見えるのでは、とAは疑った。

口をゆすぎに部屋を出たとき、イゾウはドアを開けたままドア枠に寄りかかって、Aから目を離さなかった。

「待て、一番手前の台に水を汲んだコップがある。それを使え」

Aが奥の部屋からは見えない台に行こうとすると、イゾウは呼び止めた。

イゾウは安心していた。生活に必要なトイレ、洗面所、風呂が自分の部屋から見えるすぐ向かいにあることに。
これならAをあまり外に出す必要はない。

『イゾウさん、みんなのとこ行きたい』

「ダメだ。感染症だってマルコは言っていたぞ」

完全な嘘である。

イゾウはある正義感に溢れていた。
Aを傷つけてはいけない、外に出したら絶対に何か起こる。だからAを守るために自分の側にずっと置いておかなければ。

『じゃあイゾウさん別な部屋にいた方がいいんじゃない？』

「俺は大丈夫だ。そんなヤワな体じゃない」

『なら良いけど…マスクほしい』

「今更だろ。大丈夫だから部屋で一緒に暇つぶしして、治るのを待とう」

渋々頷くAにイゾウは笑いかけて抱きしめた。暇つぶし、といっても暇なのが海賊だ。二人で喋って過ごした。

「なあ、提案があるんだが」

『ん？』

「今回ので外に出ると危ないと分かっただろ？」

『うん』

「だからしばらく部屋に居て欲しいんだ」

『やだ』

イゾウは衝撃を受けた。痛い思い、苦しい思いをしてなおAは自分の提案を拒否した。

そうか、Aの性格を考慮するのを忘れていた。彼女は仲間のためならどんな状況でも強がる。誘拐されたとき、後に聞いた話だと仲間の言葉を信じて痛みにも恐怖にも耐えていたという。

自分の前では素直に甘えるから忘れていた。
仲間に会いたいから、心配をかけるから強がっているんだ。イゾウはそう理解した。