純愛3 ページ39
翌日、Aは起きた瞬間に言った。
『イゾウさんイゾウさん、身体が軽い！』
「よかった…でも熱はまだ少しあるな、寝てろ」
『寝過ぎて逆に辛い』
「そうか…起きててもいいが、一人で出歩くなよ。今飯持ってくるから顔洗って待ってろ」
イゾウは出て行った。しかし、Aには大問題が残された。
『顔洗うには一人で出歩かないといけないんですけど…』
水を使える場所は船なので限られている。風呂の隣に洗面所、トイレもその近くだ。Aは深く気にしたらいけないと思い、顔を洗ってトイレに寄ってから帰ってきた。
「どこ行ってた？」
『顔洗ってお手洗い』
「ん、まあ近いからな」
イゾウは一人用の小さい机に無理やり二人分の朝食を置いて待っていた。
イゾウはチラリとAを見ると、すぐに朝食に目を向けた。それからやっと笑ってAの椅子を引いた。
「食べよう、座りな」
『うん…』
空気が乾いているようにAは感じた。静けさが妙に怖くて喋りたかった。なのにこの空気を作るイゾウしか相手がいなくて黙らざるを得なかった。
『う〜わおいしっ？！』
だというのにサッチがわざわざAのために別で作ってくれた朝食の味に、驚いて声が出てしまった。今まで消化の良いものに限定されていたので、今回の普通の朝食に感動した。
「フッ…ハハハッ！伝えておくな！」
『お願いします…』
恥ずかしそうに目を逸らしたAを、イゾウは目を細めながら見つめた。食べ終わってからは頬杖をつきながらまだ食べ続けるAを眺める。
『そんなに見られると食べづらいんだけど…』
「ん〜？顔赤いなって思ってな」
『熱のせいだし！！』
「わかったわかった」
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年8月6日 18時
