病は治ったはずなのに【イゾウ】 (ページ38)

今日:14 hit、昨日:55 hit、合計:17,189 hit

純愛2 ページ38

夜、Aが寝ついてからイゾウはいつも通り起き上がった。

「A…」

隣で苦しそうに眠るA、布団に落ちた濡れタオルを改めて濡らして、額にのせてやってから動き出した。

着替えだけではなく、夜起きた時に冷たい水を飲めるよう何度かイゾウは起きて新しい水を用意していた。少しも埃が舞わないよう床は水拭きしたし、今は塩分も用意すべきと軽食をもらいに行くところだ。

「サッチ、なんかくれ」

「誰の〜？」

「Aの。水だけじゃダメだろ」

「そうだな…すぐに食べれて美味しいやつか…あ、梅干しあるぜ」

夜遅くにも関わらずサッチはAのために、イゾウに梅干しを託した。イゾウは頭を下げてまた部屋でAの側についた。
汗が流れている。拭き取って、自分の頬とAの頬を合わせた。

「愛してる」

起こさないようにそっと呟いた。また涙が出る気がしたのですぐに離れて上を向く。目をギュッと閉じると涙は鼻の奥で止まった。

「あっぶねぇ…」

Aは大丈夫だと思っていたのに、こうやって辛そうな様子を見ていると本当に治るのかと疑ってしまう。
どうしよう、治らなかったら。Aはずっと辛いままか？それとも死ぬのか？
不安で、どうしようもなくて、イゾウが向かったのは甲板だった。

星が綺麗だった。
イゾウは上を向くことなく空樽を蹴り飛ばして破壊した。

「うおっ！ビビるじゃねえか！」

「な、何があったんだ。イゾウ隊長に…」

イゾウは壁を背もたれにして床に座った。そしてそのまま背中を預けていた壁に拳を叩きつける。当たった小指が少し痛かった。

「クソッ…！」

イゾウは額に手を当てた。その顔は歪んでいて目元が赤い。そしてそのまましばらく動けなかった。