不幸 ページ33
しばらく島はないと航海士は言った。その言葉通りモビーは海を悠々と進み続けていた。
「A〜次見張り〜！」
すぐに見張り台に登り周囲を見渡す。綺麗な海は眩しくて、目を細めないと眩しかった。
ハプニングは割と頻繁にやってくる。四皇ともなると有名で、その首を狙って数多の海賊が襲いかかってくる。
『5時の方向！敵船！！』
「5時！！敵だ〜！」
そろそろAの見張りも交代という時、敵が砲撃してきた。すぐに迎え撃つ白ひげ海賊団。Aはその様子を上から観戦していた。
ビュｯと音が聞こえたと同時に、右目の横に痛みが奔った。マストには矢が刺さっていて、掠めたのだと知った。
矢を使う敵は久しぶりですっかり忘れていた。矢は使い手の実力によっては鉄も砕くし銃より飛ぶ。敵船の船首に立っているやつが放ったのだのだろう。
Aは伏せてマストの後ろまわってに隠れた。
敵船がいなくなった頃、次の見張りと交代してナースのところへ向かった。
『うわ、あんまり見えない』
「そうねー、数週間もすれば治ると思うけど、大変だったらイゾウに手伝ってもらうのよ」
右目の視力を大幅に落としてしまった。一時的なもので、そのうち治るだろうが距離感が掴めなかった。何度か壁に肩をぶつけながらイゾウの待つ部屋に戻った。
「…それ、どうした？誰にやられた！」
『さっきの敵が弓矢使ってて。ぜんっぜん気づかなかった』
「クッソ…！ソイツら、まだいるか？」
『ううん、もう行方を眩ましたよ』
悔しそうにするイゾウに苦笑いをしてAは椅子に座ろうとした。しかしまた距離を見誤り、床に尻餅をついてしまった。
「大丈夫か？」
『うん、視力落ちちゃったから…治るまで手伝ってほしいです』
「当然。…本当に治るのか？」
『なに、うちの医療チームを疑うの？』
イゾウはスッと気まずそうに目を逸らした。Aは笑ってイゾウの肩を軽く叩いた。
『今からみんなの分の洗濯だから手伝って』
Aはイゾウが答える前に、自分たちの洗濯物を持とうと端に置いてあるカゴに手を伸ばす。
…が今度は壁に手をぶつけてしまって、声にならない声を出しながら手を握ってうずくまった。
「俺がやるから…Aは治るまであんまり動くな」
『ゔぅ……できることはやりたいよ。それに洗濯を通してみんなと関わってるんだから、その機会は減らしたくない』
「なら一緒に行こう」
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年8月6日 18時
