復讐3 ページ31
口籠る男に俺の苛立ちは絶頂に達していた。
「おい、いい加減にしろ…！！！」
「わ…わかるわけ…ねえ…」
「は？自分でやったこと覚えてねえってのかよ」
「噛んだのはオレだ……他、お前は…踏んだ石をいちいち、覚えてんのかよ…どこに触れたかなんて…」
言葉を遮り頭を撃った。話にならない。
帰ったらAの隅々まで確認して、そして今後こういったことがないように万全を期す。
それで手を打とう。
マルコと共にまず船から降りた。文字通り羽休めをしたいらしい。すぐに発つのだが。
すると目の前を犬歯野郎とそっくりの服装の人間が通った。
「あいつ、服装似てねえか？」
「あ？偶然だろうよい。黒のフード付きコートなんて沢山あるだろ」
もしかしたらAたちを襲ったやつの一味かもしれない。念の為殺しておこうか。
疑わしきは無罪に、なんて言葉を聞いたことがあるが俺は嫌いだ。可能性があるだけで罪、冤罪でもそこから逃げ出す力がないのが悪い。
視線は向けず、代わりに銃をそいつに向けた。するとマルコが驚いたように銃口を手で塞いだ。
「何するんだ」
「お前、自分がやろうとしたことわかってんのか！！」
「怪しい奴を殺めて何が悪い」
「服装似てるってだけだろ！！！明らかに関係ない人だ！」
マルコが必死に肩を揺さぶってくる。切羽詰まったような顔で、俺は汗を一つ流した。
「いいか、熱下がってから思ってたがお前はおかしい！！世話焼いてくれたヤツらが居なくなったらと怯えてる、そう大目に見てたがそれは流石に許せねえよい！」
理解ができなかった。なぜAらを危ない目に遭わせたかもしれない奴を放っておけるのか、時間があれば人攫いが出るような統治をする王族も殺していたというのに。
「何も悪くねえ奴を殺すのは復讐でもなんでもない！ただの虐殺だよい！！」
「Aに危機が迫って冷静な判断ができなかったんだ…悪かった」
「全く…世間体だけじゃなく人格まで極悪人になったら俺らには何が残んだよい」
とりあえず謝ってその場を収めた。マルコは大きくため息をつくと俺の肩を掴んでモビーを全力で追いかけた。
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年8月6日 18時
