回復 ページ4
A視点
それから一週間、イゾウさんの熱は朝に下がり夜になるにつれて上がり…と不安定、しかし確実に回復に向かって行った。
『イゾウさん、調子はどう？』
「だいぶ良い、あと三日くらいで治るだろう。Aのおかげだ、ありがとう」
『そんな…嬉しくなくなくなくない』
「どっちだよ」
イゾウさんの予想通り、それから三日ほどで全快した。朝、イゾウさんが先に起きて頬をつついてきたので起きた。にんまりしながら「おはよう」と言われて熱が下がったのを悟った。
『完璧？』
「ああ！頭痛もないし、完全に治った」
『良かったぁ…！』
熱を出すと脳が溶けると聞いたことがある。だからずっと高熱だったイゾウさんがすごく心配だった。
でも流石イゾウさん。身体はそんなにやわじゃなかったらしい。
「イゾウ！！治ったのか！！！」
「世話になった。ありがとう」
「よっし…！おはようイゾウ………よい…」
『マルコ！！！』
とりあえず顔を出そうと食堂に行くと、みんなが嬉しそうにイゾウさんを迎えた。マルコはガッツポーズをして、そのまま座っていたソファに倒れた。
「…マルコ、頑張ってたもんな」
「ありがとう」
『も、毛布…イゾウさん先食べてて！』
イゾウさんの病の理由がわからなくてマルコは毎日毎日寝る間も惜しんで調べ尽くしていた。医者であると治る見通しが立たないのはすごく不安なことで、その上責任も感じてしまうらしい。
部屋のベッドに移動させようとも思ったが、とにかく睡眠時間を確保してほしいので毛布を探してマルコにそっとかけた。
「A！」
こっちこっちと手招きされてイゾウさんの隣に座った。そこには私の毎日の朝食が置いてあって、モビーはバイキング形式なことからイゾウさんが取っておいてくれたことがわかった。
『ありがとう』
「ん、いただきます」
イゾウさんはこれまで気持ち抑えめに食べていた分を取り戻す勢いだ。普段の何倍もお皿にのっている…いや、積まれていると言ったほうが正しいだろうか。
「やりたいことが沢山ある」
『そうだろうね、必要とあらばなんでも付き合うよ』
「うん、ありがとうA」
イゾウさんの髪を結った姿は約一ヶ月ぶりだ。そしてイゾウさん、前に比べてすっごく人に甘えられるようになった。
心なしか言葉遣いも柔らかくなって子供みたいだ。可愛い。
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年8月6日 18時
