病は治ったはずなのに【イゾウ】 (ページ29)

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復讐ページ29

イゾウ視点

Aの首、肩には綺麗に丸い歯形が残っていた。
鳥肌が立った。誰かが、Aに噛みついた。犬や猫の歯じゃないのは明らか、さっきの男達か。

『イゾウさん…ご…ごめんなさい…』

Aは俺から顔を逸らして見て泣き出した。

とてつもなく嫌だったんだろう、痛かったのだろう、怖かったんだろう。
Aをこんなに泣かせて、許さない許せない。それにAだけじゃない。仲間達も売り飛ばされてたかもしれなかったんだ。

生かしておけるか

俺がAに触れようと手を伸ばすと怯えたように身を縮めた。ああ、アイツらのせいで俺はAに拒絶されるんだ。Aに拒絶されたら、俺はどうしたらいいんだろうか。

「…全部聞かせろ」

『え…？』

Aの後頭部に手を添えて、強引にAの口を俺ので塞いだ。

「ここ、触られたか？」

Aの唇に指先で触れて尋ねた。フルフルと首を横に振るAに胸を撫で下ろした。

「他には、どこか触られたか？」

『ううん…目覚めてからは首だけ』

気を失っていたのか。なら意識の無いうちに何かされていたとしても不思議ではない。
吐きそうなほどの嫌悪が体を駆け巡った。何をされたどこを触られた、聞いても答えられないだろう。

「風呂入って待ってろ、すぐに戻る」

こういう時は犯人に聞くに限る。細かく詳しく訊いて、殺してやる。

Aの涙を親指で拭って部屋を出た。向かうのはマルコの気配を感じる甲板。

「マルコ！」

「なんだよい、ひでぇ顔して」

「飛んでくれ」

マルコの首根っこを掴んで海に放り投げた。すかさず鳥になったマルコに飛び乗って、無理矢理前の島に戻った。