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Aが目を覚ました。暗かったが周りがみえないわけではない。すぐに確認すると他の仲間達も捕まっているようだ。
「A、起きたか」
隣にいた人が目を閉じたまま小声で話しかけてきた。
「さっきから敵の様子を見ていた…速さを売りにした人攫いみたいだ。悪かった、俺らが弱いばかりに…」
『謝らないで…私も悪かった、誰の責任でもないよ』
「目、閉じとけ。気を失ったフリして、敵を刺激しないようにしながら助けを待とう。俺らは脱出できないか探してるから」
Aが目を閉じた瞬間誰かが入ってきた気配がした。
「全員売るってことでいいのか？」
「ああ。もっとも、こんな間抜け面の男どもは売れるとは思えねえがな」
「つーかお前口の周り拭けよ。噛み癖どうにかなんねえのか」
「無理だな、全部美味そうなのが悪い」
Aはじっと動かなかった。すると顎を掴まれて無理矢理顔をあげさせられた。
「お前、起きろ」
それでも辛抱していると思いっきり首から肩を噛まれた。Aは声が漏れそうになったが歯を食いしばって堪えた。
「そいつ生きてっか？」
「…脈は感じたぜ」
「血管やんなよ、死んじまったら処理が面倒だ。売って終わりにしたい。あと、売り物噛むな馬鹿」
ピクッ…とAの隣の仲間が反応した。何もできない自分が悔しくて堪らなかったのだ。
Aはドクドクと首を流れる血を感じてしまって苦しかった。痛くて熱くて、涙が溢れそうだったが我慢した。すると出血で死なないように布を巻かれた。
ドガァン！！と音が聞こえて光が差した。ギュッと瞼に力をこめると聞き慣れた声が耳に届いた。
「大丈夫か！」
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年8月6日 18時
