病は治ったはずなのに【イゾウ】 (ページ23)

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イゾウさんはやっと腕を離してくれた。

『なんでそんなこと言うの。私も降りたかった』

「…それよりも、心配なんだ」

『心配だってなんだって、私はもう子供じゃない』

「Aが大切なんだ。わかってくれ」

『私のことを思うなら、私の好きにさせてよ！』

部屋を出ていこうとする。降りるのはともかく、サッチやマルコに話を聞いてもらおう。これは私の自由を奪う行為だ。私の味方になってくれるはず。
…もし今後もこういうことがあるなら、私たちの付き合いも見直さなければならない。

「待ってくれ…！」

絞り出したような声が聞こえて思わず振り返った。こんなに弱々しい声は聞いたことがなかった。

「ごめん…ごめんなさい……」

『悪いと思ってるならこういうことやめて』

「それは……」

イゾウさんの口が震えている。眉を下げて今にも泣きそうだ。目がどんどんと潤んでいく。

『イゾウさん』

ここで引くわけにはいかない、と強く名前を呼んだ。するとイゾウさんは膝を床について、下から縋るように見上げてきた。

「申し、訳なかったｯ…わ、別れるのか…？」

ついにポロポロと涙が大きな目から溢れた。

「嫌だ、俺は…Aッ…！」

鼻水もそのままに、頭を下げているのか俯いているのか。分からないけれど私の服の裾を掴んできた。

『…別れないよ』

こんなに想ってくれるイゾウさんを放っておけるわけがない。いざ関係を見直すタイミングが来たとしても、怖くて怖くて私もイゾウさんを切り捨てられない。

パッと顔をあげてニッコリと笑顔を見せるイゾウさん。ぐちゃぐちゃの顔。涙を親指で拭ってあげると、自分の手を私の手に添えて愛おしそうに目を細めて頬を赤らめた。

私も大概イゾウさんに甘い。これ以上強く出れず許してしまった。

「ありがとう」

『…ん』

許してしまったとはいえ納得はできていない。
ぶっきらぼうな返事しかできなかったのに、イゾウさんは私の両手を引いて自分の胸へ収めた。

「悪い、俺が居るばっかりに…」

『…いいの。悪意じゃないんでしょ？でも次はやめてほしい』

「…愛してるんだ」

わかったって言ってほしかった。話を愛の言葉で遮られたことに一抹の不安を覚えた。