久々 ページ3
食堂は相変わらず騒がしい。イゾウが来たことに気が付かない人が大半だ。
しかし扉に近いキッチンにいたコック陣、近いテーブルの者はイゾウに気づくなり明るい顔をしたり眉を下げたり。
「おお！！イゾウ！」
「待ってたぜ…！大丈夫か？」
「心配かけて悪いな…Aは？」
「Aー！！」
イゾウがAについて聞くとすぐに呼んでくれる。Aはビスタとご飯を頬張っていた。ビスタはそこそこの教養があり、Aともなんとなく気が合う。それはイゾウも同じことで、仲は良い方だ。
『イゾウさん！大丈夫なの？』
Aは急いで口の中のものを飲み込むと答えた。
「ああ、これくらいは問題ない」
イゾウは目を細めて駆け寄ってきたAの頭に手を置いた。顔は熱で赤いが、それはイゾウの気持ちとも一致していた。
『ドア近くがいいよね』
「イゾウ！ここ座れー！」
すぐにドア付近の席を三つ空けてくれる。イゾウの隣にA、その隣にビスタが座りまた米を口に入れた。
『まさかイゾウさんが来るなんて思わなかった』
「迷惑か？」
『全然！みんなで食べるの久しぶりだから嬉しいよ』
「イゾウ、今日風呂は？」
「昨日は寝ちまったからな、入るか」
イゾウも美味しそうに白身魚のフライを食べている。40代で病に苛まれていたのに揚げ物を食べられるのは流石である。
食事もそこそこに、イゾウはAの肩を借りてすぐに部屋に戻った。
『よいしょっと…』
「悪いな…ありがとう」
実のところイゾウは自力で歩ける。最近は看病されるときに少し触れるくらいで、人肌が恋しかった。そこまで言えばどうして他でもない、Aの肩を借りたはわかるだろう。
しかしイゾウは知ってしまった。病に苦しむ間、Aが自分のことを見てくれる時間が増えた。倫理的にどうこうとは考えず、それは単純に嬉しかった。
『これ着替え。汗びっしょりだろうし、今着てるのはそのまま部屋に持ってきて。すぐに洗って干しちゃうね』
「ふふ、ありがとう」
イゾウはゆっくり口角を上げた。すぐにビスタが迎えにきてしまったのでAを抱きしめることは叶わなかったが、自分に世話を焼いてくれるのが心地よかった。
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年8月6日 18時
