二日目3 ページ20
Aの近くでもイルカに乗ろうとする仲間がいたが、見事に振り落とされていた。水飛沫がこっちにも跳ねてきて、思わず顔を背けた。
「Aなんでそんな乗んのうまいんだよ!」
『えぇ?!この子たちが乗せてくれてるんだよ!ね!』
Aに応えて元気よく鳴くイルカ。Aは哺乳類とはとても仲良くなれる能力を持っていた。なぜなのかはよくわからない。
しかし魚や海王類には親を殺したのかってほど嫌われている。釣りをするとよっぽど魚好みの餌をつけない限り釣れないし、自他共に認めるほど海王類には真っ先に狙われる。
これらは多分性質のようなものだろう。守れば特に問題はなかった。
『ぎゃっ!!!』
叫び声が聞こえたので慌ててAの方を見ると、Aがイルカから滑り落ちるところが見えた。
「A!!!」
急いで着物の袖を折り、帯の上に巻いている腰布を外した。そして海に飛び込もうとした瞬間、イルカに押されてAが浮上してきた。
ホッと胸を撫で下ろした。それはAの周りにいる全員だった。
『目が…』
海水が入って染みるらしい。みんな苦笑いしながら声をかけている。
俺はすぐにさっき取った腰布で顔を拭いてやった。
『んぶっ……イゾウさんの匂いだ』
その辺にタオルは落ちているが、いつの誰のなのかは誰にもわからない。変な匂いをAにつけたくなかった。単純に臭いし。
「もっと気をつけてくれよ?」
『分かりました…』
イルカも心配そうにAを見つめている。Aはイルカのつぶらな瞳に胸を撃たれていた。海面に打ちつけるように倒れたので咄嗟に腕を掴んで引き上げた。
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作者名:はなやぎ | 作成日時:2023年8月6日 18時