二日目2 ページ19
イゾウ視点
Aは今、外でイルカと遊んでいる。せっかく化粧をしたのに台無しだな。素のAも可愛いから問題はないけれど。
俺はAを視界に入れつつ、かき氷片手に休んでいた。
「なーんかAってさ」
「うん？」
「海向きじゃねーよな」
近くで一緒にかき氷を食べていた仲間が、Aを見ながら話していた。
俺は聞き耳をたてて、メロン味のかき氷を口に入れた。
「それは分かる気がする」
「どっかの自然豊かな島で定住してた方がずっと幸せになれると思うんだよなぁ」
「う〜ん…そうかもしれないけど、Aが海を選んでんだ。俺らが口出すことじゃねえだろ」
「そうだけどさあ…」
やっぱ家族として普通の幸せを掴んで欲しいと思うんだよな、と言うこいつの言葉に俺は考え込んだ。
確かにAは海と陸だと陸の方が生き生きとしているように見える。どっちが好きとかはないらしいが、溺れたりすることに大きな恐怖を抱いていて、いざ海に飛び込めと言われたら渋るだろう。
『うわあーハハハッ！えっ乗せてくれるの？…でも私はいいかなぁ』
キュゥイ…イルカは少し寂しそうに鳴いた。
Aは今だって海から顔を出すイルカと即席で作ったプールの縁から降りずに遊んでいる。プールといっても囲いだけで、底はないから不安なのだろう。本当にまずいときは泳いだりはするが、よっぽどでないと飛び込んだりはしない。
『そんな寂しそうな顔しないで？』
眉を下げて笑いながらイルカの頭を撫でるAに声をかけた。
「溺れたら助けてやるから乗ってみたらどうだ？」
『うーん…』
キュイッ！ときらきらとした目でイルカはAをみている。その眼差しに負けたのか、Aは首を縦に振った。
『イゾウさん、絶対見ててね！助けてね！』
「わかった〜」
『そっぽ向かないで！！！』
ふざけ合ってると、Aを乗せたイルカが海に沈んだ。すると水飛沫をあげてジャンプして、Aは叫びながらも笑った。
楽しそうなAを眺めて、持って来ていたカメラを構えた。また一つ、大切な思い出になるんだろうと思った。
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年8月6日 18時
