二日目 ページ18
白ひげ海賊団の宴は一日で終わる方が珍しい。正確には全員宴気分が抜けないだけだが。
「A〜…そろそろ起きたら？」
『うん…おやすみ…』
「寝ないでよぉ…も〜…」
ナースに囲まれてAはモゾモゾと起きるのを渋っていた。徹夜こそしなかったものの夜更かしをしていて、日の光を鬱陶しそうに遠ざけた。
「失礼…A、起きろ〜」
『イゾウさん…なんで入ってくるんですかあ…男子禁制…』
「愛するAに会いにきた」
『たった数時間…』
イゾウは既に起きているナースに声をかけるとAを持ち上げた。
「手のかかるお嬢さんだな」
『手をかけてんのはイゾウさんでしょ』
「まあな」
Aは目を開けずイゾウと会話をしていた。
「俺も運んでぇ…」
「喋る元気があんなら大丈夫だ」
「Aだって喋ってるくせに…」
廊下に転がる仲間には適当な言葉を浴びせてイゾウは歩みを進めた。部屋に戻るとAを降ろし、顔を洗って着替えるよう勧めた。
普段通り、先に朝食の確保に向かったイゾウはサッチに話しかけられた。
「お前がちゃんと運ぶのってAだけだよな」
「見てたのか。…緊急時は丁寧に運んでやってるだろ」
「最近優しくなったとは思うけど、やっぱAには特別だな」
「なんで同じ対応してもらえると思ってんだよ」
当たり前のように二人分の朝食を皿によそうイゾウに、サッチは小さくため息をついた。側から見てもイゾウはAに心酔していた。
仲間への執着も同じくらいのものだが。
イゾウが座って待っていると、イゾウが用意した服を着たAが来た。イゾウはうっとりとした様に微笑んで隣に座らせた。
「今日は化粧をしようか」
『えっやらなくていいよ』
「隈、すごいぞ」
『ん…じゃあお願いします』
海水で濡れるなんて普通で、汗だってよくかく。それが海賊というものだからAは化粧に関しては諦めていた。
「何〜？A化けるの？」
『サッチサッチ、言い方よ』
「三倍は輝かせてやる」
イゾウはAの化粧をする気満々だ。Aもできなくはないが、イゾウの方が慣れているため以前から任せていた。
「イゾウの技術はすごいからなぁ。美人なAちゃんに俺も惚れちゃう」
『ふふ、イゾウさんのおかげだね』
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年8月6日 18時
