宴 ページ17
島を出航してしばらく経った。
モビーではつい先ほど大きな戦いがあり、無難に勝利できたので宴をすることになった。
「乾杯〜！」
『かんぱーい』
Aとイゾウも輪の中で楽しそうだ。しばらくするとAはイゾウから離れてナースの方へ向かった。
イゾウは離れたAを不思議そうに目で追っていたが、ナースと仲良く話しているのを見て微笑んでまた仲間と騒ぎ始めた。
『ねえイゾウさん！』
「ん？」
イゾウも酒を飲んで身体が熱を持ってきた頃、Aはやけにテンション高く話しかけた。
『今日ナースのみんなと一緒に寝るね』
こういう特別な日にはよくあることだ。修学旅行のノリでAはよくナースと共に夜を過ごし、朝は隈を顔に貼って起きてくる。
しかし今回のAは違っていた。普段と変わらない様子でイゾウに告げたが、最近のイゾウの変貌に不安を覚えたのだ。
毎日毎日服、食事、その他を用意されて、Aはただ何もせず生きるだけ。尽くされるのに慣れていないAはそれが少し怖かった。このままでは自分が依存してしまうと思った。
「わかった。ただし、夜更かしはするなよ」
『私をいくつだと思ってるの』
「いつも寝不足で頭痛だなんだって言ってんじゃねえか。看病する身にもなれ」
Aは何も言い返せず口を噤んだ。そしてナースの方へ戻ろうとしたときのことだった。
「A〜」
『うわっ！…ビックリしたぁ…』
真っ赤な顔でAの腕を引いたのはビスタだった。ビスタは自律できる方ではあるが、見事新たに仕入れた酒の度数を見誤ったらしい。酒癖の悪さは中々のものだ。
「これ、飲んでみなぁ…」
『イテッ…あ、いや痛くないけど』
「ビスタ」
ビスタはさらに腕を引いてAを胸へ収めた。それに黙っていなかったのは当然イゾウだ。イゾウは仲間のことも愛している…狂愛に近いほどに。
しかしAへの愛と家族への愛の区別はつけている。
「イ、ゾウ…？なぁんだ？」
「離してもらおうか」
「んだよぉ〜いつも仲良くよくよくしてんじゃねえの…」
「それとこれとは話が別だ」
二人を傷つけない程度に強く引き離した。そしてAをナースの方へ押し出して、ビスタには水を手渡した。
「全く…酔っ払いは面倒なもんだな」
「ん〜？」
「キショい。水飲んで寝ろよ」
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作者名：はなやぎ | 作成日時：2023年8月6日 18時
